2023年3月11-12日
メンバー:西村、見上
会の雪山集中は今年は新穂高周辺という事
新穂高起点であれば一昨年、行こうとするも寝不足等の体調不良でアプローチ敗退を余儀なくされた滝谷へ行こうと思いたち若い見上くんを誘ってみると二つ返事で行くという事で行く事に
ルートは見上くんも冬壁経験が浅いというとこで入門のクラック尾根をチョイス
3/11(土) アプローチ 新穂高ロープウェイ~滝谷
一昨年の失敗を反省し、今年は金曜半休を取り早めに新穂高ロープウェイの駐車場へ
19時過ぎ頃に駐車場へ着き荷物を準備して20時過ぎには早めに寝るようにしようとする
しかし、寝れない、、、
普段そんなに早く寝ることは皆無なのでどうしても寝付けない、、、
見上くんも同じようで2人して車の2台でモゾモゾ
外もまだ3月初旬とは思えないくらいに暖かくそれも相まってか寝つけず
携帯等をいじったりしていたら気づいたら23時をまわっている。。
急いで目を閉じてなんとかウトウトし始めたらなんと目覚ましが鳴ってしまった。。
起きる事になってものすごく眠いが仕方なく準備
午前二時頃に新穂高駐車場を出発
滝谷出合いの避難小屋までは特に問題なく順調に3時間ちょっと程で到着
歩き出しは良かったが避難小屋に着くあたりで猛烈な眠気に襲われて仮眠を要求し40分ほど仮眠させてもらう事に
なんとか起き出発するが眠気が全くとれず足取りも重くペースが上がらず見上くんについて行けず先頭を任せる事に
雄滝迄はデブリだらけではあるが問題なくすぐ着いた
滝はほぼ雪埋まっていたが上部4~5mほどが出ており左岸部分の氷を繋いで2人ともフリーで超えた
あまりアイスに慣れてない場合は短くても垂直なのでロープを出したほうが良いと思われる
そこから滑滝迄も状態はクレバス等も特に問題なく雪の状態もわりとしまっていて歩きやすかった
しかし、問題は自分の体調の方
一昨年を彷彿とさせる位に眠くて体が全く動かず5~10歩歩いては天を仰ぎながら立寝という始末、、
ほとんど意識朦朧としながらなんとか歩き続ける
ようやく沢の合流点まで来れた時には果てしない時間が経ったような気分だった
ちょうど9時頃に合流点へついてB沢へ突入していく
雲ひとつない快晴だが暖かすぎる
とりあえずここからひたすら登る
ツボ足で足首~膝下位のラッセル
僕は先程よりはマシになったが全然足は動かないので見上君にお任せ
3時間かけてようやく2800m付近のクラック尾根取り付きへの氷瀑がかかっていたであろう場所へ到達
しかし聞いていた通り氷は全く持ってなかった
登攀開始
少し休んで準備して脇から岩を繋いで登る
始めは高さも少しだし簡単そうでその上はただの雪壁なのでノーロープで行こうとしたが気温が高く雪グサグサ&草つきも凍ってなくロープを出す事に
1P目 西村 Ⅲ~雪壁 60m
簡単な壁を登り雪壁を上りビレイできそうな所を探すが出来るところがない
0.3位の支点はとれたがそれだけでは心許ないので左側のルンゼの上までロープを伸ばす事に
思いの外よくなくプロテクションが取れないなか思い切ってあがってみるがそこにも何もなかった、、、
ロープはもうギリギリでどうしようかと考えた挙句雪を払い除けるとなんとかアイスフックが決まった
アックスと共にビレイ点を構築してフォローにプアなので落ちないように指示して登ってきてもらう
2P目 見上 雪壁
その上は雪壁なのでそのまま歩いてロープを伸ばしてもらい第一尾根の基部あたりまでコンテで歩いて行く
3P目 西村 雪壁&草つき
メガネのコルが左側に見えたのでそこに向かってあがっていく事に
下側の凹み角のが傾斜がなく上がりやすそうではあったが真下まで行くとメガネのコル上側にでるほうの凹みもいけそうだったのでそちらから登る
しかし登ってみると雪がグズグズ過ぎてなかなか怖い
全然足が決まらずなんとかごまかしながら進んでいく
途中トラバースして草つき等にアックスをぶっ込むが凍っていないので全然効かず
プロテクションも取れるところがないのでメンタル勝負でなんとか登り切りメガネのコルの上へ出てクラック下でビレイ点を作りフォローを迎える
難しいというより雪が悪過ぎてクソ悪かった
4P目 見上 ジャンケンクラック右 Ⅳ
僕らはメガネのコルの所に出たと思っていたのでここがジャンケンクラックだという事を分かってのが数時間のビバーク中であった
登り始めた時はジャンケンクラックの前のピッチかと思っていた
見上くんリードで登攀開始
右のクラックをチョイスし登り始める
クラックの奥の草つきも凍っておらず悪そう
何度かテンションをかけ時間も押していたのでA0しながら抜ける
ジャンケンクラックを抜け見えなくなった所で急な落石最初は拳大の大きさのものが何個か降ってきたがその後にラクッという大きな声と共にザック大の落石が僕の50cmよこを通過していった、、、
なんとか当たりはしなかったがだいぶ肝を冷やした
そのまま少し登りビレイ解除のコール
ロープを手繰ってもらっていくと20m位の所で外皮が破けて中が見えている、、、
どうやら落石でやられたよう
見上くんにロープの損傷部分がビレイ器を抜けて上までいっているかを確認して大丈夫そうなので登り始める
とりあえず時間重視でフリーとA0を駆使して登る
ビレイ点へ着いたが手前は大きな石がゴロゴロしており危なっかしかった
まだビレイ点もあまり良さそうには見えない岩にはスリングでとっていたので注意してカムで補強して作ってもらう
5P目 西村 Ⅳ 40m
前のピッチでロープが損傷してしまったのでここまで出していなかったもう一本のロープを準備して2本で登る事に
ここで暗くなってきたのでヘッデンもだしスピード重視で荷物を1つにまとめリードは空身で登る
立体的な岩をわりと豪快に登っていき上に上ると4mほどのナイフリッジが現れる
個人的にはこの後にジャンケンクラックが現れるのと思っていたので自分がどこを登っているのかが全くんからなくなり少し困惑
とりあえず、ナイフリッジを超えその後の岸壁の向こう側へ出ると雪のルンゼが現れたのでそこを登る
登り始めるとどうやら雪の下は岩で雪が少な過ぎ&夜でもわりと気温高くて腐っていた為ランナーと取れずまた怖い思いをしてロープを伸ばす
なんとか岩まで行き細かいカム4つでビレイ点をつくりフォローを迎える
ビバーク
フォローが上がってきて開口一言目でここでビバークしませんか
ルートも何処を登っているか全くわかっていない状況で暗くてこの先も全然見えないので僕も同じ考えだった為ここでお座りビバークが決定
ビレイ点を大きいカムで補強し荷物等全部吊るし体制を整える
横になれるどころか座れる感じでもないので壁にもたれかかるように半分セルフビレイにハンギング気味に寝る事に
もちろん靴も脱げないしアイゼンすらもつけたまま
そのままシュラフカバーをかぶりビリビリになったがまぁ仕方なし
着込むもの着込んでツェルトを天幕のように張り目隠しみたいな感じで朝まで耐える
時刻は20時過ぎ、、、明るくなるまで10時間程
無線で槍平組に連絡をしてみるとなんとか通じて状況を説明しとりあえず無事ではある事を伝え明るくなってからまたなんとかする事を伝える
気温はこの時期としてはものすごく暖かいがここはもう3000m地点それでも0℃は下回ってるので当然寒い
20分くらいウトウトして寒過ぎて起きるというのを永遠と繰り返していた
途中ラジオがある事を思い出しつけたがこれがとても気が紛れ良かった!(穴井君に感謝)
3/12 登攀2日目
朝6時過ぎにようやく明るくなり始め長ーい長ーい夜が明けた
ずっと足を曲げていた為膝から下が棒のようだったがとりあえず体は動きそう
明るくなってみてみるとルートどりもなんとなーく見えたので荷物をまとめて登攀開始する事に
6P目 西村 Ⅳ 60m
また雪のルンゼを20m程登っていき弱点そうな凹みへ
ハーケンもありどうやらルートとしてあっていそう
昨日と同じように凍っていない草つきを騙しながら登っていきまた雪壁へ出て20m程ロープを伸ばして60mいっぱいで終了
大きな岩にスリングでビレイ点を構築
フォローの見上くんも朝イチ全然身体が動かなそうではあったが槍ヶ岳をバックに登ってくる
7P目 西村 Ⅳ 30m
目の前の壁を少し右はトラバースし脆そうではあるが簡単そうなバンドを左上していく
大きい岩もゴロゴロしておりビレイヤーに落石あるかもと声をかけて慎重にあがる
30mほどの所でロープの流れもありピッチをきる
8P目 Ⅲ 20m
そのままバンドを左上すると稜線へでた
稜線へ出てふと見上げると20mほどの雪壁の上に北穂高岳山荘がやっといやがる
安心して、稜線へ出る手前の岩でビレイ点を構築してフォローを迎える
そのままロープを引っ張て歩いてもらい北穂高岳山荘へ
下山
北穂高岳山荘の冬季小屋へ入らせてもらい下山準備の為の荷物を整える
昨日ここまで来れていれば快適なビバークができたなと思いつつ無事に登りきれたことに感謝
岩田さんに無線を入れて完登した事を伝えて下山開始
下山はB沢を下降
北穂高岳から大キレット方面に100m程降りた所にあるのだがそこまでの雪壁下りがかなり怖かった
実を言うと今回の中で一番怖かったかもしれない
もうある程度の時間であったので雪がわりと緩んでいたので良かったが気温が低い朝等は時間を待ってからのが無難に思える
滑って落ちたら最後何処までいくか不明
慎重に下りB沢の降り口まで
B沢自体は始めの方50m程は急であるがそのあとは快適
駆け降りるように下るが足は疲れ切っていていう事を聞きはしない
雄滝も慎重にクライムダウンし2時間ほどで滝谷避難小屋まで到達
あんなに時間をかけてビバークまでして登ったのに下山がこれほど短時間だといささかへこむ、、、
避難小屋で荷物をピックアップしみんなが待つ新穂高へ
途中白出沢付近で山スキー組にあい安心感が込み上げた
少し過ぎてしまったが
15時15分くらいに無事新穂高へ降りて来られた
今回この二日間はとても濃密で忘れられない経験になった
登攀自体は難しくはなかったがアルパイン自体の難しさを再認識させられた
冬のビバークも良い経験になり今後より一層安全に気を引き締め楽しんでいきたい
しんどくて厳しい2日間であったが降りてきてみたらとても有意義で楽しい時間でした
パートナーの見上くんに感謝です
見上感想
僕のスマホの壁紙は南岳から眺めた滝谷で、それをこの一年毎日眺めてきました。あの日、禍々しい雰囲気を放つ滝谷を眼前にして「あんなの登るの、無理だろ」と思ったことを今でも覚えています。それは同時に憧れでもあって、いつかあそこにいる自分を夢想してもいました。今回、西村さんのおかげで滝谷を攀じるという経験が出来ましたが、自分にはまだまだその力がないことを思い知らされました。また力をつけて再訪したいです。改めて、パートナーの西村さんには感謝申し上げます。ありがとうございました!
タイムスケジュール
3/11(土)
新穂高 2時~滝谷避難小屋 5時半~仮眠30分~滝谷避難小屋 6時20分発~雄滝 7時~雄滝上 7時~沢出合い 9時~クラック尾根への取り付き 12時~ビバーク点20時
3/12
ビバーク点から行動開始 6時半~クラック尾根トップアウト 9時半~B沢下降開始 10時半~滝谷避難小屋 12時半~滝谷避難小屋 13時発~新穂高ロープウェイ 15時15分頃