白山 尾添川蛇谷支流 岩底谷

日程 2020年10月3-4日
メンバー:L天久、楠瀬、畠山
ルート :白山 尾添川蛇谷 岩底谷

1日目
6:50岩間温泉 – 9:00岩底谷出合 – 14:50左支流入口 – 18:10テンバ
2日目
7:00テンバ – 10:40尾根上1,300m地点 – 14:00蛇谷本流 – 16:00岩間温泉

岩底谷を忠実に詰めた場合、稜線に道が無く下山に苦労する。
左支流に進路を取れば登りあがった尾根を伝って入渓点近くに降りてこられるので、今回はこのラインで計画した。
んが、行ってみるとそこは単なるショートカットコースではなく、岩底谷下部核心ゴルジュを凌ぐ内容だった。

●岩底谷本流
蛇谷との出合いは13mの滝。ロープを出すが落ち口が立っているうえに掴んだホールドも剥がれ、ウオーミングアップにしては心臓に悪いピッチ。
岩底谷に侵入すると両岸は見上げるような壁、壁、壁!
谷は狭まり水流はねじ曲げ圧縮され核心に突入。その名の如く磨かれた岩の底のようなゴルジュとなる。
釜を持った5m滝は畠山がリード。水線通しには行けないので、右岸のボロい岩から傾斜のある草付きを斜上。
側壁の途中の灌木でピッチを切る。ここも悪い。
懸垂15mでゴルジュの底に降り、続く滝は楠瀬にロープを託す。豪快な滝を快適に登るピッチ。
その後、渓は明るくなるが巨岩滝の乗っ越し、水圧突破のトイ状斜瀑、見事な柱状節理の滝等、応接に余念がない。
これらを過ぎると本流は平流となって河原が広がり、岩底谷の核心部は終わり。

●左支流
入り口はボサボサでパッとしないが正面には100mを超えるスラブがそびえ立っている。
そのスラブを割くようにスリット状の連瀑帯となる。水線通しの通過は望めず草付きから巻きスラブを伝って50mほど高度を上げる。
途中のバンドからロープを出し、傾斜を増したスラブから藪壁に逃げるが石は抜けるしロープは重いし酷いピッチだった。リード天久。
45mで安定した斜面に到達するが、夕刻が迫ってきた。
ヤブ中ビバークは苦にならないけど、水の確保をしてなかったので沢には戻りたい。
藪を漕ぎ下降点を探し暗くなる直前に懸垂で沢には復帰。ヤレヤレだ。水の心配はなくなったがここでは寝られないぜ。
谷は皮肉にも見事なV字峡。できれば明るい時に出会いたかった。いよいよヘッデンを灯す。
3mくらいの小滝が次々出てきてヘッデンの限られた視界の中でのシャワークライミング。名月はまだ出てこない。
小規模なゴルジュの先に3人前のわずかな河原を発見。迷わず今宵テンバとする。時計を見るとまだ18時。日が短くなった。
今日は良く働いた。盛大に焚火をし、酒も飲み干し、ツエルトで3人ぬくぬくと爆睡。

●2日目
5時起床、焚火で朝飯を作り、7時に出発。すぐに30m滝にぶつかる。登攀ラインを読むも激シャワーは避けられそうにない。
楠瀬がニコニコしながらロープ末端を天久に渡す。「はい、リード」というサイン。
10月というのに朝一から冷水に突っ込みチムニーからとりつく。
中盤スラブではランナウトの中、唯一見つけたリスにハーケンを埋めて気を取り直し、一気に落ち口へ。
続く10mも天久リード。空荷になって滑ったヌメる凹角をズリズリ登り、最後のCS5mは畠山リード。ショルダーで乗っ越し、荷揚げ後、後続はゴボウで突破した。
10月の朝から全身ズブ濡れ。以降、徐々に両岸は下がり、ナメ床が美しく穏やかな渓相へと移り変わる。
が、それは偽りの癒しで、ツルンツルンに磨かれたナメにはミズゴケが覆い、恐怖のナメ滝を味わうことになる。最後まで気を抜けない渓だ。
谷筋を最後まで詰めずに右岸のルンゼから比高100mほどの最短距離で尾根に到達。
あとは藪尾根のルーファイを楽しみながら蛇谷へと下降した。
約2Km強と短い流程ながら、ロープ8ピッチ、懸垂3回と中身の濃い沢だった。

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