白山 コヤ谷右俣・親谷

 日  程:10/7-8

メンバー:L天久卓也、和田三佳、岡嶋芽
ルート :白山 蛇谷支流 小親谷(こやだに)右俣右谷 / 親谷(どすだに)

10月に入ったとたんに寒波到来でアルプスの稜線では雪。9月の猛暑からは想像も出来ない季節の変化に、あたためていた黒部別山の計画は断念。3連休の天気も2日目以降が怪しいときた。いろいろ悩んだ挙句、勝手知ったる白山は蛇谷支流へ転進。日帰り2本でデカい滝を登ろう。小親谷右俣にある2つの大滝と、親谷の姥ヶ滝を目指す事にした。

隣り合うこの二つの谷は、白山ホワイトロードの中に位置する。この観光道路は無料区間、有料区間に区切られ、ともにゲートがある。前者は19~7時閉門。夜間、車は外に出られなくなる。
後者に至っては18~7時が閉門で、自転車、歩行は禁止で、夜間の駐車も禁止。制約がやたら多いのだ。

●10/7(晴れ)
ルート: 小親谷
タイム: 7:30入渓 8:40 二俣 9:00 70m大滝登攀開始 10:30 80m大滝登攀開始 12:40下山開始 14:30 入渓点帰着

ゲートオープンと同時にホワイトロードに乗り入れる。何度も通ったこの流域だけど、車でアプローチしたのは今回が初めて。5分のドライブで蛇谷園地Pまで走れば、小親谷出合は目の前。
寒波の名残で気温は一桁。朝一の徒渉には震えたけど、入渓してしまえば、ナメ、20m滝の登攀、ミニゴルジュ、渓を取りまくスラブの景観と変化に富んでいて、先頭を歩く岡嶋も初めて見る白山の渓谷に躍動する。

二俣まで小一時間のアトラクションをこなし、いよいよ右俣へ。斜瀑を登るとナメが続くが、その奥から急激に立ち上がっていて大滝の存在を予感させる。左谷が15m滝となって出合った直後、70m大滝が姿を現した。見上げる滝は逆三角形のスラブが広がり、白くて美しい。

●1ピッチ目 45m Ⅲ
クライミングシューズに履き替えて登攀開始。水流右に続くフレーク沿いに高度を稼ぐ。カム、ハーケンが適度に決まりプレッシャーはない。快適快適。45mのばしたところで斜上するリスにハーケン2本打ち込んでビレイ点とし、フォローの2人は同時登攀してもらう。

●2ピッチ目 15m Ⅲ+
少し傾斜が増すパート。手に持つホールドは浮いていて、カム、ハーケンもあやしいのでグレードは半増し。3手登れば傾斜が緩んで滝上の大テラスまで。高度感がスバラシイ。

●3ピッチ目 40m Ⅱ
ヌメリが強いナメ滝。ここが滝上でなければロープは不要だけど念のため。左岸水流沿いはヌメルけど、フォローで右岸の乾いたスラブを行けば歩いて登れた。

一つ目の大滝を快適にこなすと、すぐに次の80m大滝が登場。見た印象はデカイ!に尽きる。ドームのように盛り上がった形状で黒い岩肌は先ほどの大滝とは対照的。

●1ピッチ目 30m Ⅲ-
左端の水流の中、ドシャワーを浴びながらの登攀。水は凍える冷たさで早く抜けたいけどホールドは丸っとしているうえ、手も足もヌメって立ち込めない。ブラシで足元を擦りながら水流を抜け、傾斜の緩んだスラブにロープをのばす。滝中段に盛り上がった島のようなテラスでピッチを切る。

●2ピッチ目 45m Ⅲ+
滝右奥にあるカール状のスラブに取り付く。リスもクラックも皆無で浅打ちハーケン2本の激ランナウト。湿ったスラブは登るほどに傾斜が増し、ヌメリが強くなる。ホールドも細かくなってきて恐怖の滑り台と化す。草付きに到達してホッと一息。でもグズグズで安心には至らない。草にタイオフの気休めのランナーをとり、樹林帯まで潜り込んで終了。

●3ピッチ目 40m Ⅰ+
美しいナメ滝。全然難しくないけどヌメリと大滝の上というロケーションを考慮すると、念のためにロープを出す。

その上はトイ状のナメ滝が続き、元気が余っている岡嶋にバックロープを引いて登ってもらって、後続はゴボウ。

これで大滝は終了。この時点で時計は12時半を指す。18時にゲートが閉まる事を考えると、あまり余裕はない。13時半まで様子を見ながら行こうと申し合わせたが、すぐに三俣20m滝にぶつかる。スラブに囲まれ3本の滝が合わさる凄い景観。前進すれば時間が掛かるのは明白。メインディッシュも平らげたし、良いもの見れたのでここから引き返した。

●10/8(晴れのち雨)
ルート:親谷
タイム:6:00 入渓 6:30姥ヶ滝登攀開始 8:00 滝上 11:00 二俣 13:30 登山道 16:30駐車場帰着

2日目は歩いてアプローチ。日の出と共に登攀開始する為に4時から行動開始し、1時間ほどで前日車を停めた蛇谷園地Pに到着。遊歩道の先にある親谷の湯は、蛇谷本流を挟み真正面に姥ヶ滝を見上げるロケーション。足湯をしながら夜明けを待つ。

姥ヶ滝は76mの落差で幅も広くデカイ滝。
登山体系では登攀ルートは水流の中で凍えながらエイドとあるが、どう見てもそこは弱点じゃないでしょ。滝の下部をフリーで登りテラスからルートの観察をする。
水流右の壁が登攀ライン。中腹までは緩斜面だけど、上部は立っていて岩肌が黒い。コケでヌメッてんじゃないの? 剥がれる岩とかランナウトとかイヤな場面が頭をよぎり、ちょっと不安になってきた。
でも登った記録は少ないながらもあるし、前日の2つの大滝に比べると登攀は1ピッチと短い。自分を信じて行きましょう。

●姥ヶ滝上部 1ピッチ 45m Ⅳ

序盤はスタンス細かいスラブ。灌木と途中2箇所リングボルトがあって安心。
しかしここからが悪い。中盤は傾斜が立ちホールドスタンスは外傾で思った通り脆い。ハーケンを打ち込んでもリスが開いてグラグラ。マジですか?
一段上の狭いテラスに上がりたいけど剥がれそうなホールドばかり、ホールドをジワリと押さえつけて騙しながら、足はキョンを張って耐える。不安定な状態で次の手を探すがホールドはどれもあまい。冷や汗をかきながらテラスに上がる。
核心は続く。二段目はもっと悪かった。相変わらず外傾なうえ、手は遠くて甘いし足もヌメル。ハーケン、イボイノシシを1本ずつ打ち込むもどちらも墜落に耐えられるとは思えない。しかし後戻りは。出来るわけないじゃんか。


ザックを残置して空荷になり、二手の我慢だと言い聞かせて登り切った。あとはズルズル草付き斜面をミミズになって這うようなクライミング。樹林帯に入ってようやく人間の言葉を思い出した。「ビレイ解除!」
フォローは落石を警戒して一人ずつ登ったけど、メイちゃんもミカ姉さんも案外あっさりと登ってきた。ともあれ3人無事に姥ヶ滝を登り切ることが出来た。あとは癒しのパートが待つのみ。

藪を伝って滝上に出ると眼下に蛇谷渓谷と親谷の湯が小さく見える。S字に屈曲し白いスラブに囲まれた渓谷は、乳白色の広々としたナメにポットホールを散りばめ、登攀の緊張を一瞬で忘れさせる楽園のような空間を用意していた。
その後はナメと左岸に配置された岩峰やスラブの景観で我々をもてなし、二俣からは最後にヤブっぽい部分もスパイスとして提供しつつ中宮登山道へと導いた。

今年は白山に全く行けてなかったので、転進という形ではあるけど最後に好きな白山の沢を遡行する事が出来たのは幸いでした。やっぱり白山はハズレが無いね!

遡行図 白山 小親谷・親谷

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