60周年記念山行 富士山沢登り 滑沢

日  程:2023年6月25日
メンバー:L北村、 SL天久、野木、松尾、下平、長崎、坂本
天候:曇りときどき晴

プロローグ

沢登りと富士山登頂の豪華二本立て。前日の沢登りはエン沢(エンジョイ沢登り)で、今回の富士山遠征のサビはここから。3000mという大台に自分が乗っちゃうのかと思うとなんだか感無量。一年前の自分にとっては富士山というのは眺めるもの、畏敬の対象で、まさかあの上に立たせてもらえる日が来るなんて思ってもみなかった。高山病ってどんなだろう。呼吸は苦しいのかな。不安と期待で前日は少しナーバスになってお酒は飲まなかった。

AM(朝)2:00起き
AM(朝。)3:15出発

もう朝の概念が分からなくなってきた。
今回はハーネスなし、ヘルメットとゲイターは必須。人によってはストックを持っていく。

須走登山口(五合目)。標高1970m。前日は霧がかかっていたが、今朝はちらりと下界がみえる。ヘッデンつけていざ出発。
緊張で少しハイになっていた私はとりあえず安心する先輩の周りをチョロチョロ。
入り口の神社でみんな無事に下山できるようにお参り。欲を言えば高山病も嫌です神様仏様。その先の距離の長さにビビってゆっくり歩く。このときまだノーテンキな私はひっきりなしに喋る。

すぐに空は白んできて、振り返ると夜の東側から横一直線に空が燃えている。
人の生活の光が朝靄の中キラキラと瞬く。
私は自然の儚い輝きも好きだけど、遠くからみる人の営みの中の強い輝きも大好きだ。
見上げると目の前に荘厳な紅いお姿。

煌めく人間の営みと虹色の空

燃える空

AM4:15 新六合目長田山荘(おさださんそう)
この先で本道から外れるので、トイレ休憩と水分補給。空は大分明るくなってきたので、日の出を待ちつつみんなでラジオ体操第一。腕を前から上にあげてのびのびと背伸びの運動からはじまり、のびのびと深呼吸をし終わる頃、昨日と何も変わらない美しい今日がくる。

のびのびと背伸びの運動

perfect sunrise (ケインコスギ)

さいく~な日の出とみんな

その先で本道から逸れ、トラバースに入る。木漏れ日に眼を細めながらいくと、トレースもしっかり残っており、ふかふかのベッドのような道。めちゃくちゃ歩きやすいと思ったら、点線で地図にも掲載された道だった。

急に開けた場所にでると灰色に波打つ溶岩流が山頂にむけて真っ直ぐにのびている。
残念ながら水はなし。このときフェルトソールの沢靴しかもってきておらず、昨日のローカットの登山靴を持ってこなかったのは反省点。渋々下山用に持ってきていたハイカットの登山靴に履き替えいざ入渓。

横からみる溶岩流

AM5:00 入渓 標高2300m
なかなかの斜度につるつるの岩。フリクションをきかせて進んでいく。
ナメ床にミニ樋がちらほら。所々にきれいな水が溜まっているので、つい最近まで水流があったのだろう。

天空の沢登り

大分登ったあとにふと振り返ると目下に雲海が。天空の沢登り。ここは神の領域。そろそろ3000mを越える。
ふむ、これはきっと武者震い。
自分の呼吸数が普段の16回/分から20回/分に増えていることに気づく。体力的にはまだまだ7分ほど残っているが、身体はしんどくなってきているようだ。
七合目の山小屋の手前で沢は終わり。標高3140m。

神の國

なんかそれっぽくとったミニゴルジュ

新七合目見晴館 標高3200m
ここからはゲイターを装着して須走ルートに戻って頂上へ向かう。八合目、本八合目、八合五勺、、、。八合目きざみすぎじゃね~~??ハハハハハとか地図みて笑っていた昨日の自分をお鉢からドロップキックで突き落としたい。
異変がおきたのは、八合目山小屋下江戸屋を過ぎたあたりから。身体は元気。でも頭の中の自分がこれより先に上がるのを嫌がっている。
もう進みたくない、嫌だ嫌だ、なんで休まないの、もう嫌だ。
急に余裕がなくなり、前を歩く下平さんに苛立ちをぶつけはじめる。ゴメンナサイ。自分でもこれはおかしいと気づく。
1998年7月5日、生まれはニュージャージー州、育ちは福岡、寅年蟹座B型長崎明歩!!
あんた、、、いつもはもっと心の広いやつのはずや!(はず)
普段なら吐きたくない弱音。でもここで我慢したらパーティに迷惑をかけてしまうかもしれない。まずは傍にいた松尾さんと天久さんにしんどい旨を伝え、先を歩く北村さんにも異変を申告。天久さんからは自分の歩幅が大きいこと、北村さんからは呼吸を深くするようにアドバイスをもらう。みなさんがペースを落として下さったので、呼吸を深くして歩きを細かく刻むと非常に楽になる。

九合目でしっかりと休憩する時間をとって下さって、励ましをもらう。ここで脈拍をとってみるとまさかの100回/分オーバー。普段私は64回/分くらいなので、ここまで身体は大分頑張ってくれていたのだと気づく。あの苛立ちは高山病ではなく単なる酸欠だと気づいて急に恥ずかしく、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。道中トレランをしている人をちらほら見かけて、そのフィジカルに驚く。

苛立ちを爆発させている長崎  立ち姿がやさぐれている気がする

少し回復してきた長崎

AM11:00 十合目。無事登頂。

なんとか鳥居をくぐる

そこからの私の様子は写真をご覧ください。気分の振れ幅は麓にある例のアトラクション級。あの鳥居をくぐったときの感動は忘れられない。ピーカンの中ルンルン、お鉢巡りを楽しんで、日本最高峰、剣ヶ峰頂上へもうひと踏ん張り。

冬期にはアイスクライミングできる 場所があるらしい  ここまであの荷物を運ぶの、、、?

頂上付近にはまあまあ(変な)人がいた。ビキニで石碑の前で写真を撮るお姉さん、全身ピンクなおじさん。愉快だ。
北村さん、天久さんと握手を交わして写真撮影会。びっくりするくらいのハレノヒ。

なんだかほっこりする一枚

撮影:ピンクおじさん

AM11:30 下山開始。

関西蛍雪山岳会過激派

下山ルートは、もと来た道を戻るか、ブル道かで悩んだ末、膝に優しいらしいブル道を選択。大砂走り経由で須走口に戻るルート。私的にはピストンするのはあまり好きではないのでブル道?になってうれしかった(このときどんな道かあまり分かっていない長崎)。歩きはじめると柔らかい、もったりとした赤い土をかき分けるような感覚。気持ちいい。こりゃあ膝に優しい。でもこんな斜面を登るブルもすごいもんだ。ゲイターが必要な理由はこれか~~。なるほどふむふむ。←

さらに下っていくと、登山道に合流して、本七合目の見晴館に戻ってきた。新七合目大陽館を過ぎると、トラバースするように進んでいき、急に大きく下る道が。
もちろん山頂の浅間大社では、みんなで安全に下山できますように、ってお祈りしてきた。

安全に、、、安全に猛ダッシュ!!!!!

さあ始まりました。第一回関西蛍雪山岳会60周年記念ダービー。周りの登山客の中には駆け降りる人と歩く人様々ですが、うちの山岳会は一味違うぜ?全員自主参加の猛ダッシュ!!ゲイター無しは裸足と一緒。砂まみれで爆走だ!!
優勝はサカモトデュラブ(坂本君)。圧巻の走り。急な斜面を垂直に蹴りだし、ほぼ落下しているような速度で駆け下りていく。その姿はまさに跳ね馬。驚きなのは彼がゲイター無しでこの道を下っていたということだ。メジロナガサキ(長崎)は二着。どんどんコツを掴んで先輩方を抜いていく!こんなに爆笑したのは久しぶり。コロコロ笑いながら駆け降りる。ゲイターが必要な理由はここだった。
みんなを待っていた時間を抜いたら坂本君は下山に二時間切っていたかと思うと怖い。
下山後は裾野温泉ヘルシーパーク裾野でまったり。
須走口から降りてきた人たちには御胎内温泉健康センター(大人は平日600円、土日祝800円)という人気のデイスパが近くにあること、裾野ICは新東名高速道路には繋がっていないので節約するなら長泉沼津ICまで走って行く必要があることも一応記しておく。

エピローグ

清水PA(ここもSA級の広大な施設)で晩御飯を食べてさあ帰ろう。

、、ってありゃ?

ここにきてガス欠!明日死ぬんかってくらい、思い出いっぱい。笑いでいっぱい。これは土日のボリュームではない。帰り道にふと、一週間くらいみんなと一緒にいた気になった。毎回のことだけどみんなとお別れするのが寂しくなる。
日本一高い山に登ったわけだけど自分はあまり高さにはこだわりがないらしい。実際頂上の景色より、沢を登っている途中の雲海の写真の方がお気に入り。

同じパーティーで常に支えてくださり、常に明るく接してくださった松尾さん
行きの運転、私の人生相談にのって下さった上に富士山頂上付近で当たり散らしても笑顔でフォローして下さった下平さん
高所での歩き方や事前準備でたくさんのアドバイスを下さった野木さん
ちょいちょい私のボケに付き合ってくれる最強のコミュニケーション能力と身体能力で引っ張ってくれた坂本君
そして今回の山行を組んでくださった、入会当初から面倒を見てくださっている私の敬愛する先輩お二人、天久さん、北村さん
安全に、楽しくこの山行を終えることができたのは、みなさんのお陰です。感謝申し上げます。ありがとうございました。また一緒に山、行きましょう☆☆

次の週の病院実習、頑なに階段を使うのを嫌がる学生がいたのはここだけの話です。

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