シャモニーの生活と赤い針峰群 ランデックス西南稜登攀

2023年7月12日~8月31日

メンバー:岩田し 岩田ま(ヤナピ)

11年ぶり3度目のシャモニーに行くことになった。

1度目は24才、為替は1$240円の固定相場、装備は革製登山靴にストレートシャフトのウッドピッケル。12本歯アイゼンが出始め、ビレイ器などは無く肩がらみビレイとカラビナグリップビレイなので、今考えると恐ろしい技術で登っていたと寒気を感じる。

2度目は60才、為替は1$100円の変動相場、装備は現在とそう変わらない。

プラン針峰へ野木・和田ペアーと4人で登った長い一日が印象的でした。

そして今回の3度目71才、為替は1$160円、1度目より安いが、物価高を考えると一番今回が金銭的にきついと思われる。円安を待ってから行きたいが、年令・体力のことを考えるとあまり後がないので決行することにした。

今回の目標はミデイ南壁とダン・デユ・ジェアンそしてシャモニーのトレッキングである。

今の自分にミデイ南壁をリードする力は無いので、今回はガイドを頼む予定である。ガイド登山は自分の趣旨と違うがまあ仕方がないかということで日本を出発した。

シャモニー針峰群
シャモニー針峰群
ミデイ針峰とモンブラン
ソシュールとドーム・デ・グーテ
泊まったアパート
シャモニーの有名な壁画
シャモニー街並み
朝市にて 果物屋さん
チーズ屋さん 
焼鳥屋さん

シャモニーに着き、アパート(30日賃貸)に落ち着く。今回は知人の紹介で別荘を貸していただいた。現在のシャモニーはリゾート地として有名になり、登山に関係なく観光客が増えて物価は凄く高くなっているらしい。

今年のモンブランは、気温が高い日が続いたので雪が少なく、条件が良くないと地元の人にアドバイスを受ける。

シャモニーにはトレッキングコースがたくさんあり、どこに行こうかと悩むぐらいである。

歩いた先の山小屋、山のレストランで昼食(オムレツ等・ケーキ・ビール)を食べて帰って来るという非常に贅沢なハイキングをいくつも楽しんだ。

ラックブランより 
グランドジョラス
ダン・デユ・ジェアン
ボソン氷河 
山のレストラン
オムレツとケーキ
目次

モンブラン    アルベルト1世小屋ハイキング バロシーナハイキング

クライミングでは、シャモニーガイド組合のガイドを個人的にお願いした。ミデイ南壁に行きたいと伝えると、好天が3日続いて、クラック内の氷が溶けたら行きましょうということになり、まずはテストに赤い針峰群のランデックスに行くことになった。

最高グレード5A(5.9)、10pのクライミング、流石はシャモニーガイド、安定してグングン登って行き岩田も負けじと後を追う。確保支点についてはこうせなアカンやろうと思うも、おかまいなしにスピードアップで登る。

約2時間半で終了。頂上でミデイ南壁登攀のOKをもらう・・・これでアカンかったら俺のクライミング人生40年は何だったのかと落ち込んでしまうところだったが・・・。

ガイヤンの岩場1
ガイヤンの岩場2 
リードするちびっ子

出発直前に肋骨骨折したヤナピの身体の調子も出てきたので、ロープを買って(9.7mm×60m 22,000円)、ガイアンの岩場にトレーニングに何度か二人で出掛け、調整すると調子が上がってきたので、簡単な本チャンに行こうとなり、ランデックスの西南稜(4級・10P)に行くことに決める。11年前に野木・和田ペアーが登ったルートである。

ランデックス針峰西南稜(左)とガイドと登った岩峰(右)

晴れの一日をつかんでPULA行きのバスに飛び乗り、ゴンドラ・リフトを乗り継いでランデックス駅まで上がる。アパートからここまで約1時間もかからない、何というアクセスの良さだろう。

トポ無し、カム・ナッツ無し・チョーク無し、あるのはヌンチャク11セット、スリング少々のみしかないが、赤い針峰群の主だったルートは確保点も整備されているので、まあなんとかなるやろう、ダメだったら降りれば良いと考えた。

リフト終点駅の眼の前に見える岩峰がランデックス針峰、小道を10分程たどると小学生4~5年生?を含んだ親子パーテイが登攀を開始していたので、我々もその後に続く。

先行する親子3人パーテイの後を追うが、グレードは一部4級+、子供がスメアー出来ないのでズリズリしているが、頑張って登っている。3Pフェースを登ると緩傾斜帯に出て見上げると、上部は1枚フェースの岩壁。西南稜ルートは岩稜なのでこれは間違いだと分かり、左へ草付き帯をトラバースして正規のルートに出る。

ランデックス針峰上部 
取付きからの1P目 
先行する親子

先行パーテイの姿が見えないのは、嬉しいようで少し不安だ。見上げると、ルートはピナクルのある岩稜に取られている。

上部のフェース 
フェースを登る親子
西南稜のピナクル

切り立ったピナクルを越え、トラバース気味に岩稜を越えて登る。

上部に行くと残置ピンが少なくなるが、ルートファインディングしながらランナウトするピッチを快適に飛ばす。これが最後のピナクルと思いよじ登ると、目の前にまたピナクル。

それを何度か繰り返すと、やっとほんとのピークに着いた。

フォローのヤナピ
針峰群をバックに
頂上が見えた

ここには、しっかりしたラッペリング用の支点がある。我々は60mシングルロープ1本なので、2回の下降になるが降りても次の支点が見つからない(ロープ1本の場合は左の壁を降りるのが正解だった)、降りる方向を間違えたようだ。途中の岩棚でピッチを切り、ピナクルに120cmのソウンスリングとカラビナで支点(命が大事、もったいないが残置する)を作り2P目のラッペリングで無事、下降路に着地出来た。

後続のパーテイは50mロープ2本だったので、1回で降りて来た。

下降ルートを聞いて、目の前のルンゼを歩いて約20分でランデックスの駅に着いた。

リフト駅
フォローする岩田ま
ラッペリング

駅近くに有り、アプローチが30分と掛からない所に10Pの岩場がたくさん有る、岩は固く、落石の心配もない、何と素晴らしい場所であろうか。

シャモニーの一ヶ月はあっという間に過ぎてしまった。

目的のミデイ南壁とダン・デユ・ジェアンは登れなかったが、ヤナピと登ったランデックス針峰西南稜は想い出に残る登攀だった。

もう来ることはないであろうシャモニー、いやもう一度来たいシャモニーにさらば!

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