白山 尾添川蛇谷支流 シリタカ谷

日  程:10/9-10
メンバー:L天久、畠山

1日目
7:15歩き出し – 7:45シリタカ谷出合 – 14:00二俣-16:00テンバ
2日目
4:00起床 – 5:30出発 – 6:15登攀開始 -9:30懸垂開始 -11:30テンバ帰着- 12:00出発 – 13:15稜線 -17:30 蛇谷本流 – 18:00車デポ地

【1日目】晴れ
 今年3度目の蛇谷峡。もはや勝手知ったる本流河原。歩いてシリタカ出合まで30分の通勤。取水堰堤が見えると、左手にシリタカ滝が現れるがいつもと迫力が違う。水量が全然少ないのだ。秋の渇水期とはいえ、どうしてしまったんだ、お前っ!! いつも30mの落差をドバドバッと瀑水噴き出してオレたちをビビらせてたというのに。。。 と感傷にふけってみても、そもそも登れるシロモノではないので大人しく右岸のルンゼから高巻きに入る。
 ひとしきり登ったところで脆そうな壁にぶつかり、ここからロープ1ピッチ。50mいっぱいでシリタカ滝上の側壁バンドに到達。25mの空中懸垂でF2斜瀑の中腹に着地。ロープを捌くと脆い壁はトラップのようにバシバシ落石を撃ち込んでくる。水量少なくても油断ならんわ。両岸垂直に切り立った見事な縦スリットのゴルジュはシリタカ谷の関門。とりあえず無事に入渓はできた。

 高巻きを許さないゴルジュのなか、目の前にはF3が立ちはだかる。いつもなら最初は自分がリードで行くが今回は成長著しい畠山に任す。沢はいつも初見での登攀。オンサイトが絶対条件。彼女なりにライン取りを水線か側壁に走るクラックかじっくり考え、後者を選択。スイスイスイとオレの期待通りに滝上まで到達した。が、「※○%×$☆♭#▲!」何やら大騒ぎしている。登ってみると、そこにはカモシカの屍。畠山泣きべそかきながらのビレイ。

 F4を超えると傾斜は落ち渓相が変わる。ナメと釜、ゴーロ帯、時折短い巻きを繰り返す。しばらくすると、にわかに両岸が立ってきて、前方カーブを左折したところで変形3段滝が登場。これもインゼルというのか? 左はスリット状にエグれた3段滝、右は岩壁の上から滴る程度の涸れ滝となっている。スリットへの侵入はトラバースが嫌らしいので、右の涸れ滝を選択。とはいえこちらもフリークライミングには無い悪さ。ここは天久がリード。1段上のバンドに上がるのが薄被りなうえ、ホールドも抜けそうな草しかなく緊張。
続いて身を乗り出すようなバンドトラバース。緊張感あふれるワイルドな2ピッチだった。

 その後、いくつかの滝場が現れたが、いずれもブッ立ったナメ滝で相手にしてもらえず、高巻きながら前進。前方に奥壁が見え、しばらく遡行したあたりで良い時間となり幕とした。2人ならば寝れるくらいのスペースは確保でき、乾いた薪もその辺にいくらでもある快適なテンバ。過ぎゆく沢の季節を惜しみながら盛大な焚き火。

【2日目】晴れ
 5:30行動開始。すっかり細くなった沢形を詰めていくと、正面にスラブ状のナメ滝が現れ、その向こうには奥壁スラブも見える。念のためロープを出し、2段目の滝は水線沿いには行けないので、右のルンゼから登って小尾根をまたいで取り付きへ降りた。

 7mほどの滝から扇状にスラブは広がっているが、前回トークズレの奥壁を登った身からすると小規模に見えてしまう。空荷になっていよいよ登攀開始。

●1ピッチ目 45m 畠山
 7m滝の脇を登ってスラブをそのまま直上。途中灌木でランナーとれるが、その先終了点となる木やリスが見つからない。ハーケン1本埋めるのがやっと。フォローはランナーをとった灌木まででストップし、そこをビレイ点として2ピッチ目も畠山に任す。


●2ピッチ目 40m 畠山
 傾斜はないが浮石の多いピッチ。今度はしっかりした木まで届いた。
●3ピッチ目 40m 天久
 快適なピッチ バンドから一段上に上がるとスリ鉢状の広いスラブとなる。どこでも登れるがどこを目指せばよいか迷う。顕著なリスがあったのでそこで終了。
●4ピッチ目 70m 畠山
 すでにスラブの上部は近いが、扇形に広がりを持つスラブはどこを終了点とするかが悩ましい。下降することを考え、左斜め上の灌木を目指すことにする。50mでは届かないので、途中でビレイヤーが30mほど歩いて支点を移動。快適なスラブ登攀のピッチ。

 スラブの上部に立つと御前峰含め、たおやかで美しい白山主稜線がよく見渡せる。これだけ白山に通ってるのに、未だ頂には近づいたこともない。季節外れに暑い壁から懸垂3ピッチでスラブ滝の下まで降り、その後、荷物を回収後、左岸支流から下降する尾根へ向かった。

 畠山の言葉を借りると、トークズレ、岩底、シリタカは蛇谷右岸3兄弟で、その末っ子って感じだそうだ。オレの目には、シリタカ谷は人に媚びないありのまま自然、野性味の濃い渓谷に映った。奥壁は田舎の名もなきスラブといった風情だったけど、人の手垢に汚されていない味のある登攀が出来た。来シーズンは東面の加須良川流域も行ってみようか? パートナーと次のハクサンの話をしながらヤブ尾根を下降した。

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