御嶽山 濁河川兵衛谷

日程 7/22-24
メンバー L天久、畠山、片岡

1日目
6:20 がんだて公園  -  15:30 取水堰堤付近 C1
2日目
6:15 C1 – 14:20 二俣(沢ナンゾ谷出合) C2
3日目
5:30 C2 – 11:30 稜線(賽の河原)‐ 五ノ池山荘 ‐ 15:00 濁河温泉 ‐(タクシー移動)‐ 17:00 がんだて公園

濁河川兵衛谷は遡行距離約20Km、標高差2,000mの長大な渓谷だ。
御嶽火山の溶岩台地を縫って流れる水流は独特の地形を持ち、そこには不思議な光景が詰まっていた。
これまで見たことのない形状の滝、半洞窟のようなゴルジュ、側壁から溢れでる豊富な湧水、
碧い釜、美しい森林、そして2,800mのお花畑に突き上げる爽快感。
間違いなく名渓と呼ぶにふさわしい。しかし長い!

■1日目(晴れ 夕方雷雨)
がんだて公園に車を止めると沢を挟んで正面に巌立が迎える。
これは約54,000年前の御嶽山大噴火で流れ出た摩利支天溶岩流の末端にできた大岩壁で高さ72m、幅120mもある。
このような溶岩流の岩壁は兵衛谷沿いに約17Kmも連なっているらしい。
遊歩道で容易に沢に降り、序盤は濁河川本流の遡行。森林に朝陽が差し込み穏やかな流れと相まって幻想的。
体が温まってきた頃、両岸に岩が発達しはじめ、渕や滝が出始める。
サイズは大きくないけど水量があり、小柄な愛以ちゃんは徒渉大丈夫かなと思うが、さすがに慣れてて問題なし。
これらを過ぎ、長い河原歩きを経て濁河川本谷と兵衛谷を分ける二俣に到着。
ここまで4時間。この渓は地形図コピーでA4用紙2枚一杯いっぱいに渡るが、全行程のまだここかと唖然とする。
兵衛谷に入ると渓相に変化が出始める。
曲滝。片岡さんは登りたそう。泳いで近づけなくもないが、取り付きの離陸ができるか遠目ではよく判らんので、側壁から高巻く。下降に懸垂20m。
洞窟状の黒い壁から始まるゴルジュ。青というよりブルーと形容したくなる鮮やかなカマが美しくも侵入を拒む。
ボルダームーブで側壁を登ると、ゴルジュ内にトイ状の小滝を連ねるのが見える。
磨かれ濡れた岩肌が艶めかしく誘うが、こういうのにの下手に手を出すと痛い目にあうので、ワレメには降りずに草付きをトラバースで巻く。
亀甲模様のナメ。柱状節理の断面が磨かれたナメ床。浅いカマとナメ、トイ状の流れが小気味よく続き、心が癒されるパート。
これらの下流部ハイライトを過ぎると間もなく取水堰堤が現れる。時間も15時半なので、この付近で初日は終了。
タープを張って焚火を起し、さあビールと思った矢先に大粒の雨が落ちてきた。雷が近くで鳴り続け沢もアッという間に濁流となる。
テンバは一段高い台地なので心配は無いけど、片岡さんのマットの下には水溜りができ窮屈そう。
「まあ、こんなこともあるよね」と雨が止むまでタープの下で寝転がってビール。
1時間ほどでやんだので焚火再開。濡れた薪を集め頑張って着火に成功。服も乾き快適に過ごせた。

■2日目(晴れ 夕方雨)
テンバからしばらくは広大な河原状。これを過ぎると4~500mものナメが続く。
澄んだ水に戻っているけど、ナメ一面に広がる流れが引ききれてない水量の多さを示す。
鬱蒼とした針葉樹林、苔むした壁から幾重にも滴る湧水滝。
柱状節理が発達した壁や泥岩による赤い壁、水に削られた半洞窟状の壁など、この渓は表情が豊か。溶岩台地の渓谷はゴルジュといえど谷は浅く明るい。
この日は吹上滝をはじめ15~20mの滝がいくつか出てくる。柱状節理の岩壁に囲まれた直瀑が多く、ほとんどが直登不可能。高巻きは容易。
特徴的だったのが釜を持った7m斜瀑。頭上に溶岩ブリッジを掛ける。
この滝は岩を削り深いカマを掘り続け、ついには貫通して岩の橋を頭上に残すに至った瀑流と溶岩のエネルギーのぶつかり合いを見せつけられる。
材木滝付近では温泉が湧いているが、ちょろちょろと僅かな湯量で浸かれるようなものではなく、手を浸す程度。
まあ、これだけでも長い沢のアクセントとしては充分楽しませてくれる。
午後に入り、この日も夕立を警戒して歩を早める。ゴルジュを抜けると渓は突如ひろがり二俣。
本流のシン谷にはパノラマ滝40m、沢ナンゾ谷に30mほどの一条直瀑を掛け中間リッジには白い石灰華が目立つ壁がそびえていて壮観。
ここをテンバと決めたとたんに雨が落ちだす。急いで整地し本降りになる頃にタープに潜り込んだ。
雷も鳴ったがこの日も1時間程でやみ、ツエルトを掛けてキープしておいた乾いた薪で大焚火を満喫。

■3日目(晴れ 夕方雨)
最終日ではあるが、まだ標高1,000m残していて長い。5時半に出発し朝一からパノラマ滝の高巻き。
沢に復帰し、続く3段20m滝を快適にフリーのシャワークライミングで越えると、小渓となり源流の雰囲気となる。
このまま穏やかに終わるのかと思っていたが上流部もまだまだ変化に富んで見どころが多い。
前方に突如50m大滝が現れる。百閒滝という名のある滝で垂直の岩壁を両翼に広げ、中ほどをスパッと切ったように洞穴が横切る。
その洞穴に石灰華が鍾乳石のような白い柱がつながっており、これまで見たことのない景観を演出している。
その後もガレ沢と個性的な滝場を繰り返し飽きさせない。
15m直瀑。手の付けられないナメ状縦ゴルジュ瀑10m+10m+4m。岩塔を従えた30m美瀑。細くなった谷はいつしか森林限界を超え空が近くなる。
徐々に摩利支天山の荒々しい岩峰群に喰い込みアルペン的な景観へ変化していく。
高度があがり息を切らせながら歩み、稜線の雰囲気を感じる頃、最後に2,800m付近で日本最高所の滝6mを越えると草原の細い水路となってお花畑に消えた。
広々とした賽の河原を横断し、御嶽山を仰ぐ避難小屋で装備を解除し長かった沢旅の終了を迎えた。

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