錫杖岳 P4チムニー、3ルンゼ/左ルンゼ継続

日程 2021年2月27-28日
メンバー:L天久、小田
ルート :1日目 P4チムニー
2日目 前衛壁3ルンゼ – 北東壁左ルンゼ 継続

●2/27
5:30 槍見温泉P出発 7:00 クリヤの岩屋(BC設置) 8:30 P4チムニー取付き 11:40 終了点 (同ルート下降)

槍見温泉駐車場で3時間ほど仮眠して出発。寝不足の体が重い。
クリヤの岩屋までしっかりとトレースがあって1回休憩をはさんで到達。
BCを設営し余分な荷物をデポしてルートに向かう。去年一度来ているので、取り付きはすぐに分かった。

〇1ピッチ目(小田)58m
CSのトンネルを抜ける面白いルート。見た目氷も少し寝ており、ここならリード出来そうと小田が手を挙げる。
ところがどうした、スタンスは岩、アックスは薄く張り付いた氷。出だしの離陸が少し悪い。
オレは去年来てるので知っていたのだ。騙しながらの登攀。いや、騙されながら小田は登っていった。
CSのトンネルに入ると氷は太ってアックスも決まりアイスらしくなるが、傾斜が立つのでヨッコイショとムーブを繰り出す。
ここを抜けると今度はグサグサ氷のルンゼが続く。スクリュー効かない。アックス効かない。ビレイヤーのロープ残りのコールも聞かない。
幸運にも60mロープが残り2mになったところで小田はピッチを切った。
ちょうどダイレクトルンゼとチムニールートの分岐点。

〇2ピッチ目(天久)61m
いかにも難しそうなダイレクトルンゼを指さすオレを小田が制止。ルートは右だと教えてくれる。
小滝を越えると左に食い込むルンゼがこっちだと呼んでいる。導かれるままに侵入すると
前方に15mほどのコワモテな氷瀑がイラッシャイと笑っている。ビビりながらフトコロに入り弱点を探る。左端のジェードルがラインと見た。
しかし左はベルグラ。右は岩にへばり付いた薄被りの氷で、足元は腕ほどのツララ状。
立ってるのは5mくらいだけどスタンスは蹴り込むと壊れそう。コワモテな相手とはいえ、女性のようにソフトにあつかわなけれならぬ。
優しい脚さばきと強引な腕の寄せで堕としたあとは、純白無垢な雪の壁にトレースをひく。
ビレイヤーの残り5mというコールは聞こえたけど、前方の魅力的な立木にハグしたくなり無理やり突進して2ピッチ目終了。小田は1m登っておった。
アイスなのに、スクリューよりカムをたくさん使うピッチだった。

〇3ピッチ目(小田)57m
空が広がってきた。もう終了点は近い。たぶん何もない雪壁だ。安心して行くのだ!と小田を送り出す。
が、しばらく快調にのびていたロープがピタリと止まる。ブラインドで見えないけど、なにやらスノーシャワーがやたらと降ってくる。
嫌な予感は的中。ちゃんと核心は残っていた。狭まったルンゼにはCSが通せんぼし、小田はイボイノシシ一本カマして奮闘クライム。
最後の雪壁をすたこら登ると穂高の山並みと笑顔でご対面。

下降は同ルートを下降。ラインの屈曲を避けて4ピッチにきったが、最後の1ピッチで岩角に結び目が引っ掛かり、ロープが抜けない事態に陥った。
幸い、これから登るというパーティがいたので、回収してもらったが、恥ずかしいミス。気を付けます。。。

●2/28
5:15 BC出発 5:30 3ルンゼ取付き 6:30 3ルンゼ登攀開始 8:20 3ルンゼ終了点 9:00 左ルンゼ登攀開始 10:30 終了点 12:30 BC帰着 15:30 槍見温泉P帰着

他Pを出し抜こうと5:15に出発したというのに、すでに頭上には数匹の蛍たち。我々は3番手の登板。
幸い風もなく待ち時間もつらくない。快晴の夜明けに浮かぶ槍をバックにシャッターを切る。今日もモデルは小田。スキーの娘は今いずこ。

〇1ピッチ目(小田)30m
氷瀑は1か所。難しくない。難しいのは先行パーティが撃ちまくる落氷を避けるほうだ。
登ったは良いが岩陰の安全なビレイ点は満員御礼。ゴルジュの際のビレイ点で落氷地獄に身を晒しながらフォローを迎える。
が、オレはこんな危険なところに長居したくない。安全なビレイ点に空席が出来たのを見るや、そのまま5mロープを引っ張り退避。

〇2ピッチ目(小田)30m
身の安全を優先した為に、次のピッチも小田に譲ることになった。上からの落氷攻撃は未だ油断ならない。
静まったかと思って顔を出したら、狙ったかのように撃ってくる。特に氷瀑の抜け口でやられたらイチコロだ。
普通、ビレイヤーは「ガンバ!」とか言うのがクライミングのしきたりだが、ここでは「今だ!」とか言って特攻隊を指揮しなければならない。
そうやって援護をしているところ、一発コブシ大の落氷を顔面に食らってしまった。バイザー付きのメットでなければアウトだった。

〇3ピッチ目(天久)55m
やっと出番が回ってきた。先行Pも終了点に抜けたのか、もうスノーシャワーしか落ちてこない。
出だしの簡単なCS滝を登るとあとは白い廊下が続く。最後のCS下で残り10mのコール。
ふつうはここでピッチきるみたいだけど、これだと本当に見せ場が無くなるので、
色気出してCSまで登り、カムでビレイ点を作った。

〇4ピッチ目(小田)30m
終了点のコルはもう目の前。ロープ出すほどの雪壁ではないけど、念のため引いていき終了点へ。
恋焦がれた錫杖3ルンゼはあっけなくというか、落氷の思い出の方がインパクト大だった。

教訓、もっと早起きしよう。先行を許すと危ない。特にアイスは。。。

あまりにあっけなく終わったので、さてどうするべ。
グラスホッパーは事前情報通り、氷がつながっていない。天気も良いし時間も早いので、すぐ隣の左ルンゼに向かう。
が、先ほどの先行2パーティも同じく取付いている。またまた嫌な予感。

〇1ピッチ目(天久)30m
ゴルジュ状の深いルンゼでグラスホッパーと違い、入口の氷柱が大きく成長している。
氷柱右わきの凹角から登攀開始。簡単カンタン。
楽しく登れるが、油断すると上から相変わらず氷のツブテが降ってくる。しかも、デカい。
次の氷瀑の前で先行Pがビレイしていたので、ここで切りカムで支点を作る。

〇2ピッチ目(小田)30m
目の前の氷瀑はほぼ垂直で部分的にスカ氷。場所を選んでスクリューを打たなくてはならず、時間が掛って消耗が激しい。
フィフィテンションを交えながらジワジワと前進。
ビレイヤーはというと、どうもフォールラインにいるようでスノーシャワーを浴び続ける。しかも沢登りのような激シャワ―が続く。
小田が頑張って氷瀑を抜け、フォローでもシンドイ思いをして登り切り終了点に到達した。
雲ひとつない青空の下、先行者の去ったピークは、ただただ平和だった。

下降は3ピッチ懸垂で北東壁の基部まで。あとはノンビリ歩いてBCへ。
いろいろあったが、メインの3ルンゼ、サブのルートなど変化に富んで充実した内容だった。
錫杖は無雪期も含めてまた訪れたい。

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