【逆鱗】五竜岳 遠見尾根 大遠見支尾根末端壁 

日  程:2022年1月29-30日

メンバー:西村、他1名

先週末米子不動のアイスクライミングで出し尽くして燃え尽きたわけだがもう一つ今年の大物と思っていて狙っていたものが今回計画していた大遠見支尾根の末端壁にある″逆鱗″である

燃え尽くした体に喝を入れ今週末も頑張ろうと気合を入れる

今回のメンバーは先シーズン荒川出合いで一緒に登ってもらった某アウトドアメーカーのI氏

経験豊富で、メンバーとしては抜かりない

1/29(土)

前日夜に迎えに来て頂き車で白馬まで移動

白馬の道の駅で仮眠

本当は土曜に登攀して日曜日ゆっくりスキーして早めに帰るというプランが次の日の仕事に影響少なくて良いのだが、大阪から白馬までは6時間

流石に土曜夜中にアプローチして登攀は無理があるので初日は午前中hakuba47のゲレンデで滑り、午後から偵察かねて取り付きまでトレースをつけに行く事にする

偵察&トレースつけ

午前中滑ったあと移動し平川沿いの林道入れる所まで車を移動

何台かBCの車が止まっていた

I氏の予想通りスキーヤーのトレースが付いておりわりとすんなりアプローチ出来そう

今回、登山靴を担いで持っていきスキーでアプローチは現地で履き替えて登攀しようという作戦で行く

I氏は事前に登攀でも使えそうなスキーブーツを手に入れていた為そのまま登るらしい

良さそうであれば僕も来年は良さそうなブーツを物色しようか

また諭吉様が飛んでいく……

初日は偵察のみなのでいらない荷物は全部置いて雪崩装備と少々の装備のみでアプローチ

思惑通り八方沢辺りまではスキーヤーのトレースが付いており快適

所々急な斜面のトラバースが出てくるが慎重に通れば特に問題なし

西村は山スキーに慣れてない為少し怖かったが

八方沢あたりまでくると流石にトレースが無くなりスネくらいのラッセルになる

平川から白岳沢に入る手前辺りがスノーブリッジになっており一見行けるか不安であったがI氏が見事なルーファイでスノーブリッジを突破

スノーブリッジ

お見事です勉強になります

白岳沢に入ると平川とは様相が事なり雪崩れそうな地形になる

逆鱗は白岳沢に入ってから300~400m程とそれほど遠くはない

それでも谷が狭くなり危ない地帯に入ったなと少しピリッとした空気になる

慎重に登っていくと曲がり終わった後にフッと側壁に大きな氷が現れる

写真で見たまんまの逆鱗が現れた

ここまで大体2時間半のアプローチ

やはり想像通り写真よりデカくみえる

ヤバい面白そう

目の前まで移動し氷の状況を確認

 右 逆鱗 左 登れそうな氷柱

2人で話して氷結大丈夫そうだねとなり登れそうなラインを探る

逆鱗の隣にも氷柱が壁からぶら下がっており見る限りそっちの方がヤバそう

逆鱗後の目標として良いなと思う

氷結状態確認の為I氏がアックスを持って基部までいき試し打ちをする

場所により脆い部分もあるがこれなら登れるのではないかという事

ひと通り確かめて今日はもういい時間なのでとっとと明日に備えて下山する事に

シールを履いたまま下山開始しなるべく同じ所を歩きトレースを強化しながら下山

暗くなるギリギリに駐車場に戻ってこれた

帰りは1時間半程

食事を外で済ませ白馬八方の駐車場で車中泊

前日の寝不足もあり早々に寝る

1/30(日)登攀日

4時半に起床、移動して6時過ぎ頃に出発する

アプローチ

昨日のアプローチを黙々とこなしていく

冬靴も担いでいる為荷物が重い…

しかし昨日のトレースつけの甲斐もありスムーズに到着

といっても時間はほぼ変わらず8時半頃に逆鱗基部に

昨日夜降雪があり深雪が10-20cm程

天気も良いわけでなく雪がチラつく

取り付きについてみると昨日は雪崩れてなかった取り付き付近が雪崩れている

ひっきりなしという感じではないが今日は逆鱗の上からスノーシャワーも

若干不安になるが用意し始める

すると急にドンっという音が

慌ててふりむくと逆鱗の左隣りの氷柱の上から大きなキノコ雪が落っこちて来ていた

I氏と目を見合わせどうしようかーと話す

内心わりとビビっていた

今日の天気は一日粉雪、ピーカンにはならない予報で気温もそこまで上がらない

風も昨日よりはマシ

まぁなんとか行けるでしょという事になり準備を進めて9時半前に登攀開始

・逆鱗 Ⅴ+ 200m 6ピッチ

1ピッチ目 I氏 Ⅳ 30m 

取り付きまで腰くらいのラッセルをこなしI氏のリードで登攀開始

登り始め3メートル程が立っているが問題なく超えてあとは傾斜の緩い所をスイスイ登っていく

30mほど登って傾斜が立ってくる手前の氷でピッチをきる

フォローの西村も問題なく登る

所々氷が悪いところがあったが剥がせばわりとまともな氷が現れる

1ピッチ目 I氏

2ピッチ目 西村 Ⅴ+ 55m(トポでいう2&3ピッチ目)

下から見ると傾斜がわりと緩く見えたが登り始めると普通に90度バーチカル

そして登り始めてすぐに凍室の変化に気づく

あれ?氷グサグサなんだけど……

遠くから見てる分には氷結よく見えた氷であったが実際に登り始めてみると雪で氷がパックされ表面の氷はぼろっととれ中の氷はカキ氷状態でグッサグサ………

今回もメンタル核心か……

リードの墜落に耐えられないと思われるカキ氷にスクリューを突っ込みいつか良い氷になるだろうと期待を抱いてジリジリ高度を上げていく

少し傾斜が緩む所へきた

本来ならここでピッチを切る場所だか氷質はカキ氷のまま

とてもスクリューがしっかり効く場所ではなくこんな所で切ってフォローが落ちたら2人とも空中に放り出される

諦めてまたジリジリ伸ばしていくがなんかコレどんどん氷結悪くなってない⁇

ついにはシャーベットになってしまった……

スクリューを決めようとするが手で押し込むだけでズボッとハマるし抜ける……

もうメンタルを切り替えスクリュー入れてもしょうがないので氷部分残り10m程をランナウトでこなす

2ピッチ目 カキ氷

氷部分を乗っ越し雪壁部へ

落ちなくて良かった

ビレイ点を作れそうな場所を探すが良い所がない

左側にトラバースして10mほど上がった所に前腕ぐらいの灌木があったが最後2m程がバーチカルな雪壁になっている

ここまで10mほどのランナウト、その手前まで登ったら約20mのランナウトになる

そこで落ちれば間違いなく前でとった支点は吹き飛ぶのしまぁ死ぬかもしれない

流石にリスクが高すぎるのでなし

前をよく見ると10m程雪壁を上がった滑氷部分に氷が出てる部分がある

氷質が良くなってる事に一理の望みをいだいてそこまで行く事にする

わりと急な雪壁をこなし辿り着く

ロープももうギリギリであろう

氷質は……よくはない

カキ氷よりはマシだが毛が生えた程度

アックスで何とか氷を整えて

3本でビレイ点を作りフォローにコール登り始めてもらう

フォローが登り始めてすぐに落ちる……

ビレイ点が崩壊しないかヤキモキ

リードの最中もスノーシャワーがわりときていたがフォローの時もひどい

一度軽い雪崩クラスのもの来て視界真っ白

モロに受ける場所にビレイ点を作っていたので雪だるまになりながらのビレイとなった

フォローはというと切れるボロっととれる氷に大苦戦し何度もフォールしながら登ってきた

氷部分を登り切り顔が見えた時には疲れ切っていた

第一声はもう疲れきってリードは出来ないという事

時間も14時半を回っている

個人的には余裕は残っているので氷部分はあと2ピッチで登ろうと思えば可能であったが下降路もイマイチ不明等懸念部分もあった為、無理せず今回はここまでとし降りる事にする

時間切れ敗退…無念であるがここまで来れた事に感謝してまた来ることを胸に思い下降

下降

ビレイしながらフォローに左側の灌木まで移動してもらいそこから2ピッチ懸垂で下降した

2ピッチ目は下向きの細い灌木何本かを捨て縄で束ね支点とする

無事地面に降りてホッとする

あとはスキーで降りるだけ

先週も怖い思いをしたが今回の方が死の匂いは濃厚な感じがした

2週連続でメンタルボロボロになったので来週は可愛い子ハイキングへ行ってやると胸に誓い下山した

でも絶対いつかリベンジ

隣のもっと難しそうな氷柱も登りにまた帰ってくる

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