夏合宿・北アルプス高瀬川横断遡行

日  程:2019年8月11〜15日

メンバー:望月、神宅、W田(会外)

(概要:望月記)

2019年のお盆に、神宅君、富山在住の沢屋のW田君と自分の3人で、北アルプスの高瀬川水系の沢を遡行、下降で繋いで4泊5日の長期沢登りをした。具体的には七倉ダムの下に流れ込む滝ノ沢ツバメ沢からスタートし、翌日に餓鬼岳を越えて東ノ沢ニノ沢を下降し、2泊目は高瀬ダム湖畔でビバーク。3日目に野口五郎岳から高瀬ダム湖へ直接流れ込む西沢へ、湖岸をへつり泳いで取り付き、翌日4日目に野口五郎岳のピークを踏んで、(台風で天候悪化が見込まれるため、登山道で)湯又まで下山。その晩は再度高瀬川の河原にビバークして翌日高瀬ダムより下山した、というもの。

(元々は南アルプス南部を一週間かけて東西横断(雨畑ダム湖〜奥沢谷〜布引山〜所の沢〜大井川本流〜聖沢〜聖岳〜遠山川西沢〜便ヶ島)を狙っていたが、台風接近予報で北アルプスへ変更した)

当初の計画よりも日程は短縮されたが、その分沢登りとしての難易度は厳しくなり(特に西沢)、非常に濃い沢登りとなった。

今回遡行したエリアの全体図
①初日(七倉ダム~滝の沢ツバメ沢)
②2日目(~餓鬼岳~東の沢二の沢下降~高瀬川ダム湖畔)
③3日目(~西沢)
④4日目(~野口五郎岳~湯又~高瀬川河原)
⑤最終日(~高瀬ダム~七倉ダム)

■8/11〜12  滝ノ沢ツバメ沢 遡行~東ノ沢ニノ沢 下降(神宅記)

 8/11

未明に七倉ダムへ着き、軽くお酒を飲んで仮眠をとる。長期の継続遡行は初めてなので、少し緊張もした。荷物の最終確認を行い、遡行を始める。一本目は滝ノ沢ツバメ沢であり、餓鬼岳に向かって北から南へ突き上げる4級の沢になる。北アルプスの沢が初めてであり、少し不気味な雰囲気が漂っているように感じた。それは継続遡行への不安なのかもしれないが、それよりも関西の沢ばかり遡行していた私にとって、ここは生き物の雰囲気が全然感じられないということによるのだと後々気づいた。

ツバメ沢は快適だが、少々岩がぬめる。フェルトソールがお勧め。
この大滝は水流右を登攀した

登れる滝とそうでない滝が比較的明確であったこと、登れない滝には過去に巻いた跡がうっすら残っていることもあり、身構えてたほどには難しいとは感じなかった。(もちろん私以外の二人のルート取りが優れていたこともある。) 遡行自体も15時ごろにちょうど良いビバーク地を予想通り見つけられたので終了した。焚火を行おうと薪を集めたが、木の種類が悪いのかほとんどつかなかった。就寝前にやや強い雨が降ってきた。

8/12

雨はやんでおり、水量も特に増えてなかった。この日は、東沢二ノ沢を下降し、高瀬ダムの近くでビバークするのが目的である。予定も順調に進んでおり、2,235m付近の登山道へ抜けた。久々の登山道は歩きやすくて、自生していたブルーベリー(のようなもの)をつまみ食いしながら餓鬼岳小屋に8時頃に着いた。餓鬼岳に登頂すると、明日以降に向かっている野口五郎岳が見える。あんなところまで沢を辿って行くのかと改めて自分が行っていることの凄さ(変態さ)を噛みしめる。予定もあるので、30分くらいで餓鬼岳と餓鬼岳小屋を後にし、ニノ沢の下降に向かって燕岳の方向に少し進む。登山道から外れてルンゼに進むときに、背の高いハイマツがありかなり歩きづらかった。2,000mくらいまでは、そこまで大きな滝もなく順調に下降を繰り返していたが、それより下部では目の前に広がる岩壁群に圧倒される。実際に巻いて下降するのもザイル無しでは危険であり、60m一本で懸垂を3回と、2本で1回行い(単純計算で150m)、下降を行った。

餓鬼岳の稜線から二の沢へ下る
二の沢大滝
中央奥から左手前に伸びる木の生えたリッジを繰り返し懸垂下降した

そこからも何度かザイルを出して懸垂を行い、高瀬ダムへと着いた。バックウォーターでビバークしたので、薪が大量にあり、とても乾いているため昨日焚火ができなかった反動かやけなのか、大人3人でキャンプファイヤーを楽しんだ。(私は、暑すぎて寝付きにくかった…)

すてきなキャンプサイト
釣りをする望月(だがボウズ)

■8/13〜15  西沢遡行〜下山(望月記)

8/13   

5:00 高瀬ダム湖畔〜6:30 西沢取り付き〜8:30 核心部ゴルジュ〜18:.00ビバーク地

長い1日が予想されたので5:00 前にビバーク地を出発。西沢までは1キロほど、湖岸をへつり半分以上は泳ぎで進む。幸いダム湖の水温は割と温く、助かった。途中でかい魚と何度も遭遇するが、残念ながら釣りをする時間はなく全てスルー。西沢の入り口まで、思いの外早く進み1時間半くらいで沢登りを開始する。

高瀬ダム湖 側壁ヘツリ中

西沢に入ると水が急に冷たくなり、いきなり30 m級の大滝が連続するので、なす術もなく左岸を高巻く。大滝を一つ巻いたところで一度沢に降りて右岸側の壁を登り、さらに大滝2つほどまとめて巻くが、ガレたルンゼの横断が悪くロープを出して通過した。本当の核心部はまだ先だが、ここまでもまあまあハードだ。遡行開始から2時間ほど歩いたところで、両岸切り立った核心部につきあたる。標高1500m付近か。見えているのはまだほんの一部だが、まず目の前の滝は登れないのではどうにか高巻かねばならない。ここが本日一番の難所だった。

核心ゴルジュの最初の滝。左岸より大高巻き。

遡行図にあった左岸側のガレをしばらく登り、ロープを出す。望月リードでガレを横切って壁を登ろうとするが悪すぎて諦め、作戦を変更する。ガレ斜面に横たわっているでかい倒木を伝って登り、一段上から右へ(下流側)へトラバース、さらに浮石だらけの斜面を登り、最後はぼろぼろの岩(砂)をトラバースして樹林帯に乗り上がるというもの。ここはW田君がリードし、神宅がW田君の分もザックを背負い荷揚げしてからフォローで登ったが、無茶苦茶悪い壁でクライミングの対象と正直思えなかった。たしかに1時間以上かけて奮闘していたが、壁のボロさといいランナウトの激しさといい、リードしたW田君のメンタルは強過ぎる。

(大高巻きの最初ピッチ。悪過ぎ)

ここから5ピッチほどロープを出して高巻いたが、かなり沢から離れてしまい自分達の現在位置の把握が難しい。ロープを外してさらに1時間ほど進み、正午過ぎにようやく視界が開けたが、相当登ってきておりもう当面沢には降りれないことが判明した。最悪今日は沢に降りれないかもしれないが、さらに高巻きを続ける。おそらく10 ピッチ以上ロープを出し、途中懸垂下降で支流に降りて水を補給。さらに高巻きを続け、日没寸前に3ピッチ(標高差150m以上)の空中懸垂でギリギリ沢に降り立つことができた。この日は夕立のせいで焚き火はできなかったが、標高1700m付近で安全なビバーク地を見つけ、タープを張って安心して眠れた。

10ピッチ以上ひたすら藪斜面をトラバース

8/14 

5:00 出発〜12 :00 野口五郎岳〜16:00 湯又〜18:00 高瀬川河原ビバーク地

翌日8/14は朝から晴れ。朝一で大滝の高巻きと懸垂下降があったが、そこが西沢核心部の大ゴルジュの最後だったようで、急に渓相が穏やかになる。決して簡単な沢ではないが、半日程度でビバーク地から1200m標高を上げて野口五郎岳(2924m)に詰め上がった。なんという充実の一本。しかも継続遡行の3本目の沢でこの厳しさよ…

最後はひたすらゴーロ帯

計画では五郎沢下降を予定していたが、台風接近のため登山道からの下山に切り替える。山頂から4時間ほどかけてお花畑の稜線を湯又まで下山する。今山行一の癒しタイムだったが、いかんせん神宅、W田君のスピードが早過ぎてついていけない。急ぐ行程でもないし、油断すると膝に来るので無理せず降りた。湯又からは高瀬川沿いの登山道と河原歩きでビバーク地を探す。2時間近く歩いて広い河原にタープを張り、昨日できなかった分まで盛大に焚き火をし、余った食料を食いまくった。色々ハードな山行だったが終わり良ければ総て良し。ありがとう高瀬川。もはや思う残すことなし。

翌日、8/15は台風の接近で朝から雨に降られながらの下山となった。3時間ほど歩いたが特筆事項なし。下山後、信濃大町駅近くの定食屋で全員で超大盛カツ丼を食し悶絶する。

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