白山境川 大畠谷(オバタキタン)沢登り

日程: 2022年9月17日〜18日

・山行内容:沢登り(大畠谷右俣遡行〜開津谷下降)

・メンバー: A久(リーダー)、K瀬、H山(記)

・行程:

9/17(土) 4:30起床〜6:00行動開始〜7:30 2段30m滝〜13:002段40m滝〜14:15二俣着 BP

9/18(日)4:30起床〜6:00行動開始〜9:00クライミング終了、右俣へ懸垂開始〜12:00開津谷二俣〜13:00魚止め滝〜16:00ダム湖、他パーティーの車が通り過ぎ、他駐車地まで乗せてもらう、山行終了

●使用ギア:50mダブルロープ×2、カム#0.2~#0.75 1セット、ハーケン(ナイフブレード、アングル、ユニバーサルピトン)、ラバーシューズ、クライミングシューズ(ラバーシューズでも可)。

大畠谷遡行図 作成者A久さん

 台風が接近する中、天気にも恵まれ白山のキラキラルート大畠谷〜開津谷遡行を成功することができた。

 今回のメンバーは、2年前に白山の蛇谷岩底谷を遡行したメンバーである。リーダーのA久さんと私は白山山塊のいわゆるファンで、白山4年目の12本目にようやく大畠谷を遡行する機会を得た。境川流域は、フカバラ谷、ボージョ谷、ト谷は遡行済みで、これらの谷と比較してどのような性格を持つ谷なのか考察するのも今回の山行の楽しみの一つであった。

9/17(土)晴れ

 4:30に起床し、準備をはじめる。天気予報は、白山山域の天気は他エリアと比較して良い、だが台風が接近し9/19(月)の午後から荒れる予報のため、楽観視できる予報ではなかった。

 入渓点の桂橋へ向かうと、私たち以外に先行パーティー2名、A久さんの関東の知り合いの4名、の計3パーティーが入渓予定となっていた。白山の沢で他パーティーと一緒になることは一度も無かったので、この谷の知名度を再認識した。 

 勝手知ったる境川流域、容易に沢底に降りて、すぐに大畠谷の出合いへと着く。しばらくは平凡な河原歩きと、小滝の処理となるが、支流の滝もダイナミックで、地形図からは図ることができない渓谷の造形に感動する。深成岩系の明るくて美しい谷だ。

 1時間ほど歩くと、2段30m滝に出合う。ここを歩きなさいとばかりに強調する左岸の支尾根から大きく巻く。少し嫌なトラバースなどを経て、懸垂一回で沢底に。そこからしばらく河原歩きとなる。

2段30m滝

 大谷を超えると本格的なゴルジュ地形となる。他パーティーも後ろから迫ってきて、抜いたり抜かれたりを繰り返す。基本的にフリーで抜けていくが、3mCSを超える時などは引き上げてもらった。同じ身長152㎝のK瀬さんはフリーで抜けて流石である。5mCSをA久さんはフリーで抜けたが、他2名には難しく左岸のルンゼから巻くことにした。大きく巻くと、ボルトリングとハーケンの残置のラッペルポイントがあり、そこから斜め懸垂で沢底に降りる。他パーティーは果敢にも水線のラインを登攀していた。

CS3M滝、左右から自由に登る私たち

 その後の2段の釜を構える滝の処理に時間がかかった。左岸は滑ってそうで悪そう、右岸も逆層だ。比較的スッキリしていそうな右岸の浅いフレークラインをリードさせてもらったが、プロテクションが中々取れず躊躇して時間をかけすぎてしまった。他パーティーは左岸をフリーで抜けていった。その後も続く滝はフリーで抜ける。

2段の滝、他パーティーは右から悠々と

 二俣までのラスボスの2段40m滝は右岸のルンゼから大きく巻いていく。快適な巻きであった。懸垂1回で沢底に。他パーティーは左岸をトラバースする少しいやらしそうなラインから登っていた。各々が最適だ、面白いと思うラインを登って、沢登りを楽しんでいた。

2段40m滝

 小滝をこなして行き、遂にテン場の二俣に到着する。写真で何度も見たことのある風景だったが、実際に目前にするととても感動し、喜びのダンスを踊りたい気分になった(実際の踊った)。最高のテン場で焚き火を囲んで一夜を過ごすことができるなんて、至上の幸せである。他パーティーは先に到着していて、共に焚き火を囲んで、酒を呑み、山の話に花を咲かせて、良い時間を過ごすことができた。

二俣にて、テーマは「家族旅行」

9/18(日)曇り、時々雨

 4:30に起床をして、準備を始める。朝一から右俣スラブの登攀となる。他パーティーに先に行ってもらい、私たちも6時から登攀を始める。

1P目から見える右俣ゴルジュ

 私たちは左岸ルンゼから登り、リッジを超えて、右俣に降りていくラインを選んだ。念の為クライミングシューズに履き替えて登攀する。クライミングの内容自体は簡単だが、岩が脆いため、プロテクションは取りにくい。白山だと蛇谷の岸壁を二つ程登攀したことがあるが、それらと比較すると一番岩が安定していたように思える。全員がリードをして、4Pの楽しいクライミングとなった。

4P目のビレイポイント

 右俣へは1回の懸垂で沢底に。開津谷へ合流するためにCo1410のコルを目指していく。雪国の最後の詰めにありがちな滑滝が連続する。藪漕ぎ無しでコルを超えて、ちょっとしたガレを降りて、容易に開津谷へと合流した。大畠谷側の岸壁を振り返るとそびえ立つのは仙人岩だ。本能的に登ってみたいと思ったが、富山の知人がやはり登攀していた。ボロボロの壁を登りたい気分になったら、また訪れてみようと思う。

 開津谷は大畠谷と比較すると、滑りやすい感じであった。ボージョ谷に近いような茶色の岩質が多かった。二俣を過ぎて、フリーで下降が困難な滝が3つ続き、左の尾根を乗越して本流に繋がる支流に懸垂1ピッチで下降した。その後の魚止の滝は、フリーで降りて、最後は残置のスリングで懸垂した。

魚止の滝

 その後もクライムダウンが難しい滝が現れる。2段に分かれていて、1P目10 mは残置なども無く、仕方がないため捨て縄240㎝を岩に巻きつけようとしていたが、A久さんが細い灌木を持って「いわす?」(草や灌木を束ねてハーフヒッチで結ぶこと)と笑顔で提案してきた。正直拒否したかったが、下も釜だったのでまぁ大丈夫かと、初イワシ懸垂を経験できた。2P目は残置のボルトハーケンがあり、スリングを付け足して懸垂する。

イワシ懸垂で降りてくる

 その後は河原歩きと堰堤越えの区間となる。10個近くの堰堤を巻きと懸垂で越えていく。単調で苦しい区間であった。途中アケビを見つけて口に含み心癒される。

 桂湖に合流してからは、最初はダム湖をへつることを考えたが、ヘドロに足を取られてとてもではないが進める感じではなかった。右岸を見上げると橋が見えて、作業道が確認できた。壁を登り、快適な道を進み道路に出ると。先行パーティーが車で通りかかり、私たちを駐車地まで送ってくれた。用意されたような最高のフィナーレであった。

 山行を振り返って、大畠谷は『日本登山体系』でも「第一級の渓谷」と称されるように美しい谷であった。過去の記録『日本の渓谷’97』やウェブ上の10年前の記録を調べてみた。記録によるとゴルジュには雪渓があり、それが沢の難易度をあげていたように読み取れる。近年の昇温で雪渓の消失も早まり、沢の総合的な難易度は変わってしまったかもしれない。雪渓のある大畠谷を見たかった気持ちもある。しかし登るラインによっては面白さも、難易度も変わり如何様にもアレンジできると思う。魅力的なラインが沢山ある谷なので、また数年後に別のラインから訪れてみたいと思う。

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