白山 尾添川蛇谷支流 トークズレ谷

日程 2021年8月28-29日
メンバー L天久、畠山

1日目
3:15起床 – 4:00歩き出し – 5:30トークズレ谷出合 – 6:10入渓 – 12:10二俣 – 15:00テンバ
2日目
3:30起床 – 5:00出発 – 6:30登攀開始 – 9:30登攀終了 – 10:00ヤブ尾根突入 – 11:00稜線

【1日目】晴れのち小雨
のっけから理不尽なピッチだ。
4段目の滝、空荷で取付き側壁のジェードルに登路を求めるも、上部に行くほど斜度は増しホールドはなくなる。
灌木を握る手は徐々にパンプし、スタンスを探して張る足も攣りそうだ。嫌な汗がにじむ。
自分の登攀能力の無さに見切りをつけ、ランナーふたつ分、緊張のクライムダウンから、水流に寄せた行きたくないラインへ。
ハーケン2枚埋め、遠く外傾したスタンスに体重を移し逆足を切る。この一歩が怖い。
その後、逆相のスラブをジリジリと滝上へ。朝一から心臓に悪い。

トークズレ谷は5段の小ぶりな連瀑から始まる。
蛇谷の他の支流はシリタカ滝、アカイチ滝、岩底滝、姥が滝、瓢箪大滝とほとんどが見栄えする巨瀑で出合う。
それに比べると地味な存在なんだけど、この悪さは何なんだ!

このピッチに1時間も掛かかってしまう。フォローの畠山を迎え、5段目は割愛しブッシュにロープをのばす。
暗いうちに出発したというのに、すでに観光道路はオープン。時折出合の橋を車が通過し、こちらの気も知らずに子供が無邪気に手を振る。

対岸にはスラブ壁が天高くそびえる。雪国特有の悪い草付きをトラバースし、懸垂でやっと水線に復帰。
極細の見事な廊下に歓喜するも、前方にはすぐに登れない滝。
側壁5mの高さでトラバースを試みるも、ホールドのない1歩の大跨ぎを躊躇し、ロープを出して泥壁を30mほど斜上。
この調子じゃ捨て縄が足りなくなるので、直掛けできる木まで巻き、再び懸垂下降。

白い岩、美しい滝群。素晴らしい廊下。だが、キビシイ。まるでちさ子だ。
両岸にはいたる所にスラブが発達し、常に見下ろされ威圧されている感じ。
ロープを出して直登した滝はすべて荷揚げ。乏しいリスに浅打ちハーケンでの支点もしばしば。
二俣を過ぎると巨石帯が待ち受け、ショルダー連発。
昼過ぎからは小雨が落ちてくる。増水を気にするような降り方ではないけど、
時間も押しているし、なにより限られた視界でのスラブ登攀はできない。
スラブは翌日の楽しみとし、奥の二俣手前にあった唯一の河原で幕とした。

【2日目】晴れ
ヘッデンを灯して5時に出発。
すぐに切れ込み鋭いV字峡が空を狭め、地を這うように曲がりくねった廊下が続く。
左岸に門番のような2つのスラブ滝を見送ると、ババーン、キター!って感じで突如奥壁大スラブが華やかに広がった。
両岸は数100mもの大スラブがせり上がり、2人は今その底辺にいる。
いったいどこを登ればいいのか、にわかには見当がつかない。上部が見えないのだ。
崩れた雪渓付近でクライミングシューズに履き替え、ダブルロープで登攀開始。

●1ピッチ目 天久 35m
スラブを伝う水流脇のカンテから取り付く。
小石を埋め込んだような岩肌のスラブ。雪崩が運んできた泥や小石を払いながら登る。
下部はカム2本が取れたが、上部はピナクルにシュリンゲタイオフ。
斜上後に安定したテラスでピッチを切るが、ここも支点に乏しい。

●2ピッチ目 畠山 50m
スラブのピッチ。ハーケンたくさん持ってきたが無意味。
リスが全くないのだ。浮石をクリーニングしながらジワジワと登る。
結局ランナーは2本しか取れず我慢のピッチ。
一か所スタンスが抜けてヒヤッとする。落ちたらグランド。

●3ピッチ目 天久 45m
傾斜が緩み、ほとんど歩き。スラブに乗ったザレによるスリップに注意するのみ。

その後、傾斜は寝たのでロープを解除。振り返ると対岸のスラブが稜線まで続いていて壮観。
反対から見たら、きっと我々もあんな壁の中に立っているんだろうな。仙人窟岳も近くに見える。
スラブの傾斜が増す前に右手のブッシュに逃げ、鹿道を拾いながら稜線へ。
そこから密藪の尾根下降。

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