行縢山・雌岳南壁 空飛ぶ玉ねぎ(6p、5.11d)登攀

2021.04.07
行縢山 雌岳南壁 空飛ぶ玉ねぎ(6p、5.11d)
OGT氏(会外)、望月パーティにて登攀。

2021年春の九州クライミング遠征。比叡山、鉾岳で1日ずつ登った後の3日目は行縢山に新しく開拓されたマルチルート「空飛ぶ玉ねぎ 6p、5.11d」をやる事にした。比叡、鉾のベースとして3日宿泊した日之影町の仲組公民館から、1時間ほどのドライブで行縢山に到着する。ここには今回初めて来たが、延岡の街からほど近いところにこれほど大きな岩壁があるのに驚く。

行縢山奥壁と行縢の滝

林道終点の駐車場に車を置いて沢沿いの登山道をしばらく行くと雌岳南壁の下部岩壁が対岸に見えるが、明確な渡渉点が分からない。適当に沢を渡って岩の多い斜面をしばらく登ると南壁のへりに突き当たり、壁を見て右方向に踏み跡を辿る。やはり来る人は少ないようでトレイルは荒れ気味。しばらく登ると4本ほどショートルートがあり、その先に大きなハング。ここが下部岩壁と上部岩壁の間のバンド入り口だろうと思いながらトラバースを始めた。大ハングの下にはフィックスロープがあり、新しい平行ボルトが二箇所ほど打たれているが、露出感のある壁でしかも結構濡れており、フィックスロープが張られていてもトラバースはかなり怖い。しかもやたらとトゲトゲの草が生えていてメチャクチャ鬱陶しい。ルート取り付きの場所が分からず100mほどトラバースを続けたが、どうも違うとわかり引き返す。戻りは横着せずロープを出した。戻ったところで地元クライマーに会い、場所を聞いたらまだここは下部岩壁の途中で、空飛ぶ玉ねぎは上部岩壁なのでここではないとの事。1時間近く時間をロスしてしまったが仕方ない。

さらに10分ほどアプローチ道を登ったところに再び大ハングがあり、空飛ぶ玉ねぎのトポにあった目印の洞窟(人1人が入れるくらいの岩小屋)を発見。周囲も確認してここだと分かったので、クライミング準備にかかる。(取り付き位置のGPS座標:32.625783N, 131.582763E)5ピッチ目が核心5.11dなので、奇数ピッチはOGT氏、偶数ピッチは自分の担当として、10:30登攀開始。

1ピッチ目5.9は岩の脆さ、後半思いがけずランナウトしてムーブも悪く油断できない。松の木の生えたバンドにて終了。

1p目 5.9
凹角からカンテ状スラブを登る。見た目より悪い。

2ピッチ目5.11aは短いが前半は細いクラックにマイクロカムとナッツでランナーを取りながらのフェイスムーブで左上、バランシーな動きを要求される中盤、さらにハング下を右上してハング出口のボルトにクリップしてからが核心。ムーブを読むのに相当悩んだが、最後はギアラックをボルトにデポして身体を軽くしてからフルスロットルで突っ込んだら、どうにかギリギリムーブが繋がりOSできた。11台のOSなんて相当久しぶり、かつマルチルートでは多分初めてなのでかなり嬉しかった。

3ピッチ目5.11bは滑り台を右上してからのかぶり気味のコーナークラック。側壁のスタンスが使えるが剥がれそうな脆い岩が多く油断ならない。OGT氏は余裕でOSしていったが、自分はザックを担いでのフォローではなかなか厳しく核心はエイドで越える。

3p目 5.11b
美しいコーナークラックだが、ところどころ岩が脆いので要注意。

4ピッチ目はグレード5.10aのフェイスでところどころカムも使いながらもしっかりとしたボルトが打たれているのでラインは明瞭。最後の緩傾斜部分だけはどこを登ったものか迷ったが、右にクラックを発見し右回りで抜け、松の木でビレイ。たまに岩が脆そうなところはドキドキしたが、快適にOSできた。

4p目 5.10a
快適なフェイスを登る。

そして5ピッチ目5.11d。OGT氏のリードで被ったコーナーからハングを越えるのだが、核心に打ってあるボルトへのクリップと、その先のハング越えの一手が非常に遠く残念ながらテンション。かなり苦労するもフリーで核心を越え、設定の終了ポイント(ボルトはなくカムでビレイ点を設定)をさらに越えて6ピッチ目のクラックを登っていく。

5p目 5.11d
かぶったコーナーはかなり悪い。

自分はこのピッチはどう考えてもザック担いで登れる気がしないので、ビレイ点から荷上げしてもらおうと考えていたのだがそうも行かず、結局核心はエイドでも厳しく、こんな事もあろうかと準備していたマイクロトラクションでセルフユマールして越えた。なんだかんだ疲れてしまい、その後6ピッチ目5.11aもテンションかけながらのフォロークライムとなった。後半は正規ラインではなくクラック通しに登っており、ロープが非常に重たかったらしくラスト5m手前の藪バンドでピッチを切っていたので、残りの短い区間は僕のリード(ほぼ木登り)でゴール。10:30登攀開始〜17:20終了と、ほぼ7時間かかったことになる。

下山は歩きやすい登山道で1時間ほど。途中寄り道して行縢の滝を見に行った。どうにか暗くなる前に車に戻れてホッとした。

行縢の滝
間近で見ると迫力がすごい。

ルートの感想としては、やはり岩は脆くて油断ならないが、クラックとフェイスを繋いでスッキリしたラインで内容も濃く、とても面白かった。イレブン台が連続するマルチなんか初めてで最後はヘロヘロになったけど、強いパートナーのお陰で無事登れて本当に良かったと思う。

なお翌日は大崩の小積ダキを考えていたが、かなり疲れていたので本匠へ移動してフリークライミングへ予定変更したが、結局レスト日となった。

佐伯観光で行ったさいき海の市場。
品揃えはなかなか良かった。
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