日程 2021年3月6-7日
メンバー L天久、北村
8:15 道の駅飛騨白川出発 14:00 1,885m付近 15:30 雪洞完成 大ノマ谷降り口偵察 17:30 BC帰着
■1日目(雨のち曇り 風強し)
夜半しとしと降っていた雨は、朝になってもしとしとと続いていた。
こんな時期に濡れて歩くわけにはイカンので車の中で二度寝を決め込む。
8時頃になるとやっとしとしとも収まってきたので1時間遅れでぼちぼちと歩き出す。
しとしとによって湿った緩んだ雪。ワカンを履いていても歩は重い。
デブリの沢を渡り、急登にあえいで1,244mを越えると展望がババーンと広がる! ハズなんだけど、今日はあいにくガスの中。
強風の中延々と続く白い闇、エッチラオッチラ約6時間。1,885mピーク付近のこんもりした斜面でしんどくなり、
もう先は尾根も細るしと言い訳をして、この辺で雪洞を掘ることにする。
3mのプローブを刺しても底突きしない緩斜面。風下に場所を定めスコップを振るう。
1時間半の土木作業で2-3人テンよりも少し広い秘密基地が完成。さあ、ビールと言いたいところを我慢して翌日の下降点まで偵察に行く。
頂上直下のコルから下降だが、ホワイトアウトで雪庇がどんだけ出ているのかよう判らん。
トレースだけ引いてヨレヨレになって雪洞に帰着。ヤレヤレやっとビールだ。
■2日目(晴れ 無風)
3:50 起床 5:20 BC発 5:55 コルから下降開始 6:50 第1岩稜登攀開始 10:40 南尾根 11:00
三方崩山ピーク 12:00 BC帰着 12:30 BC発 15:00 道の駅へ下山
星が出ている。風もない。徐々にしらみゆく白い稜。三方崩は我々を快く迎え入れてくれたようだ。
大ノマ谷を見下ろすコルから絞まった雪をきしませながら約350m下降し取付きへ。
〇1ピッチ目(天久)55m
未知の雪稜に対する北村さんの実力が判らないので、まずは自分がリード。ラビーネンツークの簡単な雪壁をサクサク登る。
先の灌木までもう一息というところで残り5mのコール。緩傾斜の雪壁真ん中で終了。アックス2本+スノーバーで支点作成してビレイ。
〇2ピッチ目(北村)50m
灌木でランナーが取れるピッチ。左の凹角から直上を試みるが雪が悪いらしく体があがらん。左のスロープ状に舵を切り直し、キノコ雪の下でピッチを切る。
ラインが少し右往左往している。ルーファイに迷いがみえる。視野をもっと広く!
〇3ピッチ目(天久)30m
北村は右の雪庇に突っ込みたかったみたいだけど、オレの目には右からサッサと稜に乗った方が無難に見える。
稜に乗る部分がちょっとしたキノコ雪で体が空中に露出する。高度感たっぷり、脳から何か出て気持ちがいい。マジックマッシュルームみたい。
灌木とスノーバーでランナーを固めどりしてキノコ雪を越えプラトーに乗り込む。ロープの屈曲が大きいので30mと短めに切る。
〇4ピッチ目(北村)35m
前方に小岩壁が見える。たぶんあれが核心。そこまではなんてことない緩やかな雪稜。基部の灌木で切る。
〇5ピッチ目(天久)55m
小岩壁は右のルンゼから簡単に巻けそうだけど、それをやってしまうと登攀放棄になるので、正面から行く。
15mのブッ立った雪壁を登って岩に到達。岩周辺の雪はやっぱりザレザレ。
左に回り込むと悪いなりにも雪がつながっていたので、灌木にランナーをとりながら15m直上し小岩壁はクリア。
その上にのっかるキノコ雪のピークは切り崩しても良かったけど時間が掛りそう。
雪庇に頭を押さえられながらトラバースしルンゼから稜上に復帰。狭いリッジに座って腰がらみでビレイ。
〇6ピッチ目(北村)55m
簡単な雪稜。ロープ要らんかなとも思ったが、念のため。陽当たり良い稜は雪が緩みだし、バケツトレースをひく。
小ピークのテッペンでスタンディングアックスビレイ。白い稜、青い空、赤いヤッケが映える。
〇7ピッチ目(天久)55m
巨大雪庇と化したナイフリッジの通過。かなり太く成長して落ちようがないが、念のためロープをひく。
その後、稜は太くなって傾斜もまあまあ緩んできた。終了点の南尾根P3も間近だし、もうロープ要らんでしょって事でここでロープをたたむ。
南尾根からは真っ白な御前峰が正面に眩しい。最後約150m三方崩のピークを踏む。御岳山から剱まで連なる山稜が見事。
夏の沢で一目惚れした白山だったけど、雪の時期また違う姿に惚れ直した。
地域山岳会の記録を探って掘り出すローカル雪稜ってアルプスのグラビアルートとは違って静かで味わい深い。
●メモ
・第1岩稜は取付きは約1,700m。南尾根P3、1,960mに突き上げる。
・どこからでも沢にエスケープが容易。ルートもさほど困難ではなく楽しめる。
・今回は稜線から下降して取付いたが、大ノマ谷を下から遡って取付く事も可能。