三倉岳 フリークライミング遠征

源助崩れ

メンバー 望月、OGT(会外)

報告者 望月

日程 3/30〜4/2、4/17〜19

 

この春、花崗岩のクラックを求めて広島の三倉岳へ二度ほど遠征した。

三倉岳には以前から何度も訪れているが、今回は初めていくエリア、ルートも数多く経験できたので、備忘録がてら報告をまとめていきたい。

何回行っても思うが、三倉岳の花崗岩は日本屈指の質の高さがあり、エリア、ルートの数も半端ないので何度行っても新鮮な気持ちで楽しめる素晴らしいところだ。

また、これだけのルート数があるにもかかわらず、ボルトの整備が行き届いているのもありがたい。開拓者やローカルクライマーの努力に感謝したい。

 

目次

3/30 源助崩れ周辺

 

  • スカイウォーク5.10c OS
  • ラッキーネーブル5,11a( トップロープ)×
  • モルモットクラック5.11a ×、(トップロープ)⚪︎

 

初日はギリギリ深夜割引を使うために朝方4時前に関西を出発。空いているのでスムーズに走って8時過ぎには三倉岳キャンプ場下の駐車場に到着した。よく晴れて桜も満開と素晴らしいタイミングだ。

 

今まではキャンプ場の下の駐車場をいつも利用していたが、今年からは夕方にゲートが閉まらなくなったのでキャンプ場事務所まで車で行ってもOKらしい。非常にありがたい。

初日は運転疲れもあるのでアプローチが近い方が良い、ということで源助崩れを目指す。

 

1本目におすすめされたのはスカイウォーク(5.10c)

源助崩れの2階にあるスラブルートで、岩の中間から右にしばらくトラバース後、スラブとカンテを登っていく。登り出すといきなり高度感がすごい。核心は手順にかなり迷ったが、勇気を出して一歩上がればガバに届く。その後はフリクションを信じてスラブに立ちこみ、なんとかムーブを見つけてオンサイトできた。

スカイウォーク5.10c

 

その後、ラッキーネーブル(5.11a)をトップロープで練習。大昔にもやったことがあったが、中間のハング上に乗り込むムーブが相変わらず難しい。奥にある見えづらいホールドの位置を教えてもらいなんとか抜けることができた。次はリードで登りたいと思うが、まだまだ難しいかも。

午後は数年前からの宿題となっているモルモットクラック(5.11a)へ。

久しぶりにリードしたら前半の前傾クラックは問題なく越えられたが、後半でムーブに行き詰まりテンション。その後トップロープで練習したら今度は落ちずにフィニッシュできたので、次回には期待できそう。

 

 

3/31 Aコース8合目、下の岳奥壁

 

  • 腹八分5.10b  RP
  • マンタ5.10a  RP
  • クレッセント5.10d  ×
  • ハニートラップ5.10a  RP再

 

二日目はAコース登山道の8合目まで登る。こっちの登山道はかなり急で8合目までは距離も長く、アプローチでかなり疲れてしまった。途中道を間違えて下の岳奥壁へ迷い込んでしまう。

看板ルートっぽい地雷也5.11cは下部のクラックがかなり濡れていた。あまり雨に強いエリアではないみたい。左端のルートから順に登る。

 

腹八分(5.10b) 前半はスラブ、後半はカンテからスラブを挟んでクラックへトラバース。下から見上げたらクラック脇にボルトが打たれているように見えたが、登って納得。このクラックは使えなそうだ。総じて快適だった。

 

マンタ(5.10a) 前半はスラブ、後半はハンド〜ワイドクラック。スラブの途中、カムが使えるポイントを見逃してかなりランナウトしてしまった。ムーブ的には落ちないと思い突っ込んだが、後から気づいて反省。後半のワイドは快適だった。

 

クレッセント(5.10d) ローカルの方にお勧めされていたルート。下から見上げると綺麗なフェイスに猫が爪で引っ掻いたようなクラックが3本、切れ切れに入っている。一本だけ打たれたボルトはカム、ナッツで代用できそうだ。サイズはフィンガーからハンドで、スタートはフェイス的なムーブでクラックへトラバースする。前半は掛かりのいいフィンガークラックで割と快適だったが、左のクラックに移るムーブが遠く、かつ中が濡れていて怖くなりテンション。ムーブは大体わかったのでまた次回頑張りたい。

クレッセント5.10d

 

夕方は、登山道を少し降りた場所にある下ノ岳奥壁というゲレンデへ移動する。ここは5.11台中心にトラッドルートが多く、一日楽しめそうなところだった。夕暮れが近かったため、以前登ったハニートラップ(5.10a)をリピート。スラブとクラックのミックスルートで、スケールも30m近くと長くて充実する良いルートだと思う。

 

4/1     黒ダキ、足裏エリア

 

  • スナフキン5.10b  OS
  • レガシィ5.10c  敗退
  • 木の精5.10c  OS

 

3日目は黒ダキと足裏エリアという、どちらも初めて行くエリアで登った。この二つのエリアは2020年版のトポに収録されている。アプローチが少々遠いものの、道はわかりやすくトポ通りに歩いていけば迷うことはない。山のあちこちに咲く白い花が綺麗だった。両エリアとも三倉岳のメインの3本の岩稜から西に離れたところに位置しており、Aコース登山道4合目小屋のあたりから登山道を外れてアプローチする。

 

スナフキン(5.10b) スタート5mはスラブに走ったクラックにカムをセットしながら登る。1箇所、どうしてもランナウトするポイントがあるのだが、まっすぐ登るムーブがかなり悪そうで右から迂回してしまった。その後は左へトラバースして凹角を登っていくが、ボルトが打たれており、ルートの雰囲気が変わる。後半は快適と思いきや、最後にかなりムーブを迷うミニ核心あり。内容多彩で大変面白かった。

スナフキン5.10b

レガシィ(5.10c) 薄かぶりのコーナークラックで、スタートと上部はワイド。迫力もスケールも十分。一目見てこれは登りたい!と思わせるカッコいいルートだが、スタートのワイドクラック(キャメ6番がスカスカな外開きのチムニー)が難しく、無念の敗退。

 

木の精(5.10c) ひたすら左上するルート。あまり登られていない様子でかなり砂っぽく、アルパイン的。再度はワイドムーブも出てきて奮闘的なクライミングとなり、大変充実した。ロープが振られるためカムの回収が大変だった。リードアンドフォロー推奨。

木の精5.10c

 

4/2     ABCフェース周辺、モルモットクラック 

最終日はBコース登山道途中のABCフェースと源助崩れ周辺で登った。

  • ティータイム5.10d ×敗退
  • モルモットクラック5.11a ×敗退

 

ティータイム(5.10d)、ぱっと見はそれほど難しそうに見えなかったが、行ってみると大違いだった。核心はフィンガークラックからカンテをまたいで細かいフットスタンスを拾い、かなり遠いカチまで手を飛ばし、そのまま一気に数手繋げる。というムーブだとは理解できたが、強度は明らかに5.10台ではないと思われ、しかもしくじると棚にグランドする。何度か試みたものの自分にはこなせず、また、ボルト間隔が遠くエイドでの前進も無理だったので無念の敗退。同行のOGT氏がその後TOPアウトしたが、体感11cとのことであった…

ティータイム5.10d

 

モルモットクラック(5.11a)初日のリベンジで再度トライ。今回遠征の成果として登って帰りたかったが、前半のハングをこなした後の垂壁(シンハンド〜フィンガーサイズ)で前回確認したはずのフットスタンスを見逃し、力尽きてテンション。その時にぶら下がったカムの効きが甘かったようで外れてしまい、まあまあな距離を墜落し、壁にヒザを強打してしまい、この遠征自体が強制終了となってしまった。幸い翌週には完治したが、カムのセットも含め残念すぎる凡ミスである。次回こそは必ず!!

4/17   青白ハング周辺

半月後、再び広島・三倉岳へ向かう。(実際には九州・宮崎遠征を計画していたが、悪天候予報で転進した)

初日は久しぶりに青白ハングまで登る。駐車場はかなり暑く先が思いやられたが標高を上げると少し涼しく快適だった。

  • モスクラック5.10b  RP再
  • トップレス5.10c RP
  •  筋斗雲5,11b(トップロープ)×
  • ツツジが咲く頃5.9 RP

 

MOSクラック(5.10b) 、何度登っても楽しい三倉を代表する三ツ星ルート。ルートが長く、ロープが屈曲するので長めのスリングが欠かせない。最後のワイドセクションは消耗との戦い。

MOSクラック5.10b

 

トップレス (5.10c) 以前トライしたが登れなかったルート。今回、おそらく数年越しに宿題を回収できた。中間部にクラックの中が少し脆いところあり。また、終了点手前はクラックが途切れるので、浅い溝に身体を入れてイモムシのように全身を擦り付けながら登るしかない。

 

筋斗雲(5.11b) 三倉らしい厳しいスラブ。イレブン台とは思えない。トップロープでトライしたにも関わらず、核心は難しすぎて何をしたらいいか全くわからなかった。

 

ツツジの咲く頃 (5.9 )これも数年越しの宿題だったような?クラックからクラックへトラバースするところが意外に悪く緊張した。

 

4/18   Aコース7合目、下の岳奥壁

         

  • ロミオ5.9 OS
  • スイートコーン5.10b ×、RP
  • 奥の細道5.10b OS

 

2日目はAコース7合目フランケと下の岳奥壁へ。アプローチが遠く、登山道も結構な急登。

暑さもあって朝からバテバテだった。

 

ロミオ (5.9)、主に水平クラックにカムをセットしながら、スラブを登る。登る前は易しそうに見えたスラブだったが、登ると意外に緊張させられ面白かった。

 

スイートコーン (5.10b)  、前半のボルトが一本打たれたフェイス部分がかなり悪く、10bとはとても思えず。1回目はムーブを解決できず途中敗退。二度目で解決できたが本当にギリギリだった。核心を越えた後のコーナークラックは易しい。

スイートコーン5.10b

 

さだはる君 (5.9)   これもスラブ。カチを繋いでいけるので割と登りやすかった。

さだはる君5.9

 

奥の細道 (5.10b)  大きな壁の真ん中に走る綺麗なコーナークラック。だが最近まで鳥の巣があったらしくルート内に結構羽や糞が散らかる。クラックの中も泥が詰まっているところもあり、あまり登られてないのかもしれない。少々アルパイン気分で楽しめた。

奥の細道5.10b

 

4/19   中ノ岳フランケ

 今回の遠征最終日は中ノ岳フランケへ。

ここもBコース登山道を7合目まで登ってからトラバースなので朝イチは重荷に喘ぎながらの急登を頑張るしかない。とはいえ標高が上がると見晴らしもいいし、風も心地よい。また、広島チームの3人も同じエリアへ来られたので岩場が賑やかで良かった。

中ノ岳フランケにベースを置くと、隣のセロタワーエリアやマラカリタワーエリアのルートも近くて便利だ。

  • セロタワー右1p目5.9 OS
  • セロタワー右2p目5.10b OS
  • への字ハング5.10c  OS

 

セロタワー右(1p目5.9、2p目5.10b )1p目は見た目より傾斜が強いが、ところどころガバがあるので思い切ってグイグイ登れる。いろんな要素があってアルパインっぽく、ルートファインディングも必要だが楽しかった。多少グレード辛めに感じたが三倉ではいつものこと。体感5.10a?ラッペル用の残置スリングが掛かった立木にビレイ点を作成し、フォローを迎える。

セロタワー右 1p目5.9

 

2p目はすっきりとしたハンドクラックだが、ところどころジャミング力を問われるパートが出てくる。個人的には小川山のカサブランカよりは難しく、ジャク豆に匹敵する好ルートと感じた。グレード感はやはり少し辛めで、体感5.10c?傾斜がある分、ジャク豆よりは難しい気がする。

セロタワー右 2p目5.10b

 

なお、セロタワー右の2p目には終了点はなく、岩塔のてっぺんを少し歩いて隣のセロタワー左ルートの終了点を利用して下降する。そのためロープがかなり擦れるのでロワーダウンよりも懸垂下降のほうが良い。ただし懸垂下降の場合、ロープを振られながらなのでカムの回収がちょっと大変。

 

への字ハング (5.10c) 10mほど登った中間部に1mほど張り出したハングを越え、その先は徐々にクラックの幅が広がり最後は薄かぶりのオフィズスという迫力あるルート。

このエリアに来たら登りたいと思っていたのだが、朝イチに下から見上げたときは正直あまり登れる気がせずスルー。そのまま日和ってしまおうかとも考えたが周りの皆様から温かい励まし(もといプレッシャー)をいただき、夕方のラスト一本でトライした。

登る前はなんてことないと思っていた出だしが思いの外悪くて慎重になるが、ハング下でしっかり休めるスタンスあり。呼吸を整えてから思い切って突っ込む。ハング越えはハンドジャムがよく効き、そこからはフィストジャムとワイド登りになるが、足がバチ効きなので思ったほど悪くなかった。三倉らしい一本で遠征を締めることができて嬉しい。 

 

への字ハング5.10c

 

 

 

 

 

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