報告者:望月 慎一郎
日 程:2020年3月14-15日
メンバー: L望月、天久
今シーズン、一度は本格的な冬壁に挑戦したいと思っており、いろいろ調べた中で抜戸岳2421.6m峰南東壁というマイナー壁(日本登山大系と、新版冬期クライミングに載ってます、興味ある方是非ご覧あれ)を見つけた。ここは雪のルンゼを駆け上がって壁に取り付き、ミックス、雪稜、氷雪壁を越えて稜線に登り詰めるという、かなり面白そうな内容。
天久さんに組んで頂けることとなったが、残念ながら今年は少雪高温でコンディション悪そう、さらに直前に気温高い中で雪も降って、アプローチ中の雪崩も怖いので転戦を決める。元々、その翌週に2人で鹿島槍ヶ岳の荒沢奥壁北稜を予定していた為、奥壁の偵察も兼ねて東尾根を登ることにした。
結果的には、直前および一日目の降雪、さらに他パーティ無しのためスタートからゴールまで全くトレースを頼れず全部ラッセルとなかなか体力的には厳しかったが、東尾根の核心部では最高の天気の中で美しい雪稜登攀を楽しめた。しかし、鹿島槍ヶ岳のピークを越えてからがとにかく長く、延々と続くラッセルと下山路の赤岩尾根の悪雪に苦しめられ、下山予定時刻を大幅にオーバー。最終的に下山は22時。そのまま夜中じゅう運転し、明け方に帰阪と最後はきつかったが、充実した記憶に残る山行となった。
3/14 雪
7:00鹿島槍スキー場駐車場~7:30東尾根末端取り付き~12:10一の沢の頭~14:30二の沢の頭~15:15幕営地
前日夜に大阪を出発し、AM3:00頃に大谷原手前の最終コンビニ(ファミマ)に到着。車中泊したがなぜかあまり眠れず、後々の行動中に寝不足と全身の筋肉の攣りに苦しめられる。もともと天気が微妙とわかってはいたが、入山日というのに空はどんより、雪が結構強く降っており、登山口には他の登山者の車、トレースも一切残っていなかった。大谷原から15分程度で林道から東尾根末端に取り付く。尾根の末端は崖になっていたが、乗ってしまえばしばらくは緩やかな登りが続く。雪が腐って踏み抜きまくるので、早々にワカンをつける。東尾根の下部は天然杉の大木が連なる快適な登路だが、標高を上げるにつれて降雪が激しく、ガスも濃く視界が悪い。寝不足でフルラッセルのため望月ばて気味でまあまあ遅れながらなんとかついていく。
一の沢の頭の手前あたりからは稜線が細くなり、ちょっと登攀モードになってきたのでワカンは外し、数回ロープを出しながら雪稜を越えていく。難しくはなかったものの最近雪が増えたようで、どっさり乗った雪が安定しておらず結構時間を要した。二の沢の頭を越え、次の小ピークの先のコルをテン場に決め、斜面を掘り崩して幕営。
下界が近いせいか、問題なく携帯が使えて最新のSCW天気予報をチェックできたのはよかった。夜中にかなり強い風が吹き、翌朝には天候回復したが、テントが半ば埋まっていた。
3/15 晴れのち雪
5:40幕営地~7:00第一岩峰取付き~8:30第二岩壁(通過10:00)~11:50鹿島槍ヶ岳北峰~12:55南峰~15:40赤岩尾根合流点~17:30高千穂平~20:45西沢出合(林道に合流)~22:00鹿島槍スキー場駐車場
夜中の暴風が収まり、天気は快晴。コンディションはかなりよさそうでテンションが上がる。しかし前日の雪はかなり多かったようで結局なかなか快適キックステップとはいかず、延々と新雪ラッセルが続く。1時間ほど登ると第一岩峰の取り付きに到着。ここは幸い雪の状態もよくスピーディーに抜けられそうなので、ロープは出さずダブルアックスの雪壁登りで通過する。難しくはないが、上のほうは結構な高度感があり緊張する。
この先から稜線が左右そぎ落ち、傾斜も出てくる。第一岩峰を越えて1時間ほどで第二岩峰の取り付きに着き望月リードで1ピッチのクライミングで越えた。見た目では結構簡単かと思い取り付いたが、前半は支点があまり取れず、雪も締まってなくてサクサクと登っていけない。新雪を払い落としてじわじわと前進するので時間が掛かる。また寝不足のせいか?リード中に両足の腿の筋肉が攣って動けなくなったり色々と苦労するが、核心の薄被りチムニーは、リンクカムで支点をキメてダブルアックスで恐々乗っ越す。
そのまま岩峰のトップまで雪のルンゼを登り、傾斜がなくなったところでピッチを切る。アックスを埋めてセルフビレイとし、腰がらみでセカンドをビレイする。このピッチは雪の付き方次第で難易度が全然変わってくるのではと思われるが、たかが1ピッチのリードに1時間以上かかってしまったのは反省。軽量化と登攀スピードアップが必要だ。第二岩峰を越えた後も標高差200m以上とかなり長く、快適雪稜のはずだがラッセルがきつくてスピードを上げられない、、、
最後は北壁を上から覗き込みながら進み、どうにか12時前に鹿島槍北峰に到着する。ここからの下山が長いのだが、下山の前に鹿島槍の南峰までが結構遠く、結局1時間ほど掛かってしまった。稜線は雪が飛ばされているところは歩きやすいものの、たまに全身ハマるようなシュルンドが隠れており手間取らされる。鹿島槍南峰を通過した後も降り口までは長く、当初、鎌尾根か布引東尾根から一気に下降できないかと考えていたが、14時頃からガスが上がってきて視界が悪くなってきたため降りたことがない尾根を下降するのは危ないと判断し、遠回りでも道を知っている赤岩尾根を下降することにした。が、赤岩尾根の分岐までがかなり長く、ひたすら緩やかなアップダウンと平地ラッセルでかなり時間が掛かってしまった。
16時前に赤岩尾根を下り始めたが、分岐の道標には登山口まで12キロの文字があり、軽く絶望感を覚える。下り始めは雪崩れそうな谷筋のトラバースの通過あり。結果オーライだったが、今考えれば万一流された時のためにロープを出すべきだったと反省。もう残業は確定していて、さらに雪も結構強く降ってくる。せめて暗くなる前に高千穂平まで下ろうと必死こいて進むが、途中ばててしまい高千穂平までの間は天久さんにロープを持ってもらった。
暗くなるぎりぎりの17:30に何とか高千穂平に到着できたので、留守本部の尾嶋さんへ下山遅れを連絡し、日が暮れた後は尾根を外さぬようGPSをチェックしながら下降する。それでも最後は登山道から離れてしまい、暗闇の中、懸垂下降2回で西沢のほうへ強引に降りたった。西沢は結構デブリがでており歩きづらかったが15分ほどで本流との出合にたどり着き、広い川原を何度か渡渉してようやく林道に合流する。このときは雪が強く休憩するゆとりもなかったが、とりあえずアイゼン、ハーネスその他を外し、ガチャ類で重たくなったザックを担いでとぼとぼと駐車場を目指す。暗闇の中、空腹と疲れのせいもあって最後の林道歩きは非常に長く感じた。
駐車場に着いたら、車が雪ダルマになっていた。こんな遅くでは当然風呂にも入れず、飯屋も空いておらず。最終コンビニで着替えて弁当を食べ、雪が降る中交代で400キロを夜通し運転して帰阪した。